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黒き刃は妖精と共に
【プロローグ】 化猫の宿
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お、と柔らかな笑顔を浮かべて反応を返していた。
 彼もまた、世間的に普通といえないような独特な衣装に身を包んでいて、もしこの老人を先に見たのならばここが一部族の集落だといわれても何の疑いも抱かなかっただろう。
 この集落周辺に張ってあった結界魔法の使い手らしいが、なるほど。腰は曲がり、目も半ば閉じてしまっているような小さな老人だが、なかなか強大な魔力の持ち主だ。さぞ昔は名のある魔導師だったのだろう。
 また、お前は誰だというやり取りがおきるかと思ったが、こちらに気づいたらしい老人が声をあげる前にウェンディちゃんとシャルルが説明をしていた。

「なぶら、わかった。おまえさん、シャルルとウェンディをモンスターから救ってくださったのじゃな?」
「え? ああ……まぁ、一応結果的にはそうですね。僕も食いつかれたところを彼女の魔法に救われましたし、一方的なわけではないですよ」
「なぶら謙遜することはない。この子達は戦う魔法をもたない、すでにぺテルがしてくれいているようだが、化猫の宿(ケット・シェルター)のマスターとして、このローバウルが改めて感謝しよう。ありがとう」

 そういって頭を下げたマスターローバウルの口からは、ばたばたと液体が――におい的に酒か何かだろうか――流れ落ちた。

「ちょ、マスター! いつもお酒はちゃんと全部飲んでから話なしなさいって言ってるでしょ!」
「んん、すまんなシャルル」
「あわわ……マスター、これ。ハンカチで口元拭くから口閉じて」
「すまんなウェンディ」

 前言撤回。大丈夫かこの爺さん。

「ウェンディちゃん、マスタローバウルは調子が悪いのか?」
「あ、心配しないでください。マスターいつもこうなので」

 それはそれで心配なのだけれど……。
 しばらくして、先ほどのメンバーのうち数人が運んできてくれたお茶とちょっとした菓子を前に、僕は改めてマスターローバウルの前に座っていた。
 ボケ始めているのかという疑いは会話をするうちに杞憂だとわかり、竜の存在についていろいろと情報交換を行ってはみたが、長い付きい日を生きているとはいえやはり多くは伝説や御伽噺だった。
 予想通り古くから存在する集落とのことだったので期待したが、文献などもウェンディちゃんの頼みですべて調べつくしてあるらしい。

「なるほど、自分の記憶を探して一人旅か……なぶら、苦労したことじゃろう」
「旅自体は大して辛くはなかったんです。苦労も、それほど。幸いその辺の魔導師には負けないくらいの力もありましたから。ただひとつ、どこにいってもドラゴンが架空の存在だって言われるのが不安でしたが……」
「うむ、己の唯一の記憶すら否定されてはな」
「そういった意味では、今日ウェンディちゃんと会えたのは僕にとって大きな進展でした。この記憶
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