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黒き刃は妖精と共に
【プロローグ】 化猫の宿
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信頼を寄せられているのだろうか、その一言でメンバーたちは物騒なものを下げた。

「すいませんクライスさん。みんないい人たちなんですけど、お客さんがあんまりこないところなので……」
「い、いや気にしなくていいよ。戦える人がいないって聞いてたからちょっとおどろいたけど」
「ご、ごめんなさい……」
「気にしなくていいってば」

 改めて見れば、人垣の中に子供の姿はない。
 ここにいる十数人がギルドの全員というわけではないだろうが、もしかしたらこの子はこのギルド最年少なのかもしれない。
 それほどまでに、ここの人間の過保護さは過剰だった。いいことだ。

「あの」
「はい?」

 振り向けば、先ほどぺテルと呼ばれていた占い師姿の女性が申し訳なさそうにこちらを伺っていた。

「申し訳ありませんでした。なにぶん客人が少ない場所なもので失礼なことを……」
「ああ、いえ。お気になさらず、怪しい格好をしていることは自覚していますから」
「そういっていただけると恐縮です。それで、失礼ですがここにはどういった理由で……」
「言ったでしょ、ぺテル。お礼がしたいから私が無理を言って来てもらったの」
「……そ、そうなの」

 再びウェンディちゃんによる指摘が入る。
 やはり外界との接点をあまり持たないだけあり、排他的な面のあるギルドなのだろうか。敵で無いと理解してはくれたようだが、かといってそこまで友好的な雰囲気は無い。
 もちろん僕の存在が嫌がられているような様子は無いのだが、なんと言うのだろうか……おっかなびっくりしたような様子だ。
 なにかやましいことをしているのか……と思わないでもないが、違法な薬品などの臭いは感じない。なにより、幼い少女一人のためにここまで必死になれる人がそんなことをしているはずが無い。

「わかったわ。でも、一応このギルドの人ではないし、マスターに一回会ってもらってからにしなきゃだめよ?」
「わかってる。心配しないで、いい人だから」

 その返事に、こんどこそ安心したらしいぺテルさんは先ほどより若干柔らかな表情で僕と視線を合わせた。

「ウェンディを助けていただいてありがとうございました。皆の代表として、私がお礼を言わせていただきます。小さなギルドですのでたいしたものはありませんが、歓迎します。ウェンディ、お茶の用意はしておくから」
「うん、ありがとうぺテル」

 一転、笑顔が多くなったギルドのメンバーたちに見送られ、僕たちはその場を後にした。








「マスター、ただいま戻りましたー」

 猫の頭を象った建物の入り口からしばらく歩くと、文字通り集会所といえるような広間の奥に座る老人の姿が見えた。どうやら彼がマスターらしく、ウェンディちゃんの声に、お
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