【プロローグ】 化猫の宿
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告白により、僕たちはただの他人、というのは難しい縁のもち主だった。
滅竜魔導師。
存在自体がファンタジーとされるドラゴンを倒すための魔法を持つ者。
どうせ今後会うことはないだろうと、どうせ子供だからどうってことないだろうと、軽い気もちで見せた滅竜魔導師としての力。
せいぜい、すごい魔法ですね、で終わるだろうと思っていたのだが彼女は予想の斜め上の行動……自分も滅竜魔導師だと名乗り、失われたはずの魔法、治癒魔法を俺に見せたのだ。
ウォードックとの戦闘時にかけられた補助魔法。
幼い少女が操るにしてはオーバースペックのそれを平然と扱う姿は彼女が只者でないことを予感させてくれたが、まさか僕の旅に終止符を打ちかねない重要な人物だとは思いもしなかった。
自分だけだと思っていた滅竜魔導師。まさかこんな形で合間見えるとは、とあの場では嬉々として彼女に詰め寄ったのだが……。
「ねぇ、本当に何も知らないの?」
「残念ながら、ね。僕も探してる側の人間だったんだから」
「なによ、折角ウェンディの親が見つかるかもって思ったのに」
集落から歩くこと十数分、ようやく沈黙を破ったシャルルはしかし、僕の言葉に残念そうに俯いてしまった。
そう、彼女もまた、僕と同じく滅竜魔導師を探していたのだという。
ウェンディちゃんの使う滅竜魔法は、天空魔法。【天竜グランディーネ】という天を司る竜に教えられたものだという。物心付いたころからの育ての親らしく、魔法のほかにも一般常識や教養などの人として生きていくために必要な知識のほとんどはその竜から教わったらしい。
しかし、【天竜グランディーネ】はある日突然消えてしまったらしい。
ケンカはしたことすらなく、遠出の際にはかならず一緒についていったのでそういった類のものではないとすぐにわかったという。結局グランディーネがその後ウェンディちゃんの前に姿を現すことはなく、いろいろあって今のギルドにやっかいになっているそうだ。
時に。
なぜ僕が、竜の消えた日や、彼女らがもたらす知識の内容に対し疑問系で語っているのかというと……。
「シャルル、そんな言い方はよくないよ。クライスさんは私よりずっと大変なおもいをしてたんだろうし」
「なに、僕は幸い戦う力もあったしね。一般知識も、ウェンディちゃんの話を聞いた限りしっかり教わった後だったらしいし」
「でも、記憶がないなんて……不安じゃなかったですか?」
「まぁ……ね」
僕が探していたのは、僕に力と知識を与えてくれた竜の記憶だ。
目的はあっても行き先のはっきりしないこの旅の始まりを、自分自身が知らないのだ。
いつからこうして旅しているのか。どうしてこうして旅しているのか。本当の目的はなんだったのか。
気づいたら旅をしていた、というのが
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