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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第2話 別れと出会い
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提としております。ヴィクトールの場合、第二親等の祖父母はすでに鬼籍に入っておりますが、叔父である夫グレゴリーは健在です。そして我がボロディン家はヴィクトールが幼少の頃から馴染みがあり、経済的にもいささか自信がございます」
「それは……わかってる。だがレー……ボロディン夫人」
「つまり法的にも道義的にもそして経済的にもなんら問題はないという事で、よろしいですね、シドニー=シトレ少将閣下?」
「あ、あぁ……」
 おい未来の統合作戦本部長、なんでそこでレーナ叔母さんから目を逸らす。それに今、叔母さんの事を名前で呼ぼうとしただろ!!
「よかった。さすがは閣下でいらっしゃいます」
 俺の両肩に置かれた手に力が込められたあとの、その声には勝者の余裕というかなんというか、完全に上から目線な声だった。翻って見れば、長身の黒人少将閣下はすっかり肩を落としており、思いのほか小さく見えた。
「……では、ヴィクトールは私が預かるという事でよろしいですな?」
「……致し方あるまい。一〇年来の天才法務士官と言われた女性に私ごときが勝てるわけがないだろう」
 明らかに悔し紛れに近い声ではあったが、シトレ少将は溜め息交じりで応えると、俺に向かって背を伸ばし完璧な敬礼をした上で立ち去って行った。

 その少将を玄関まで見送ったグレゴリー叔父がリビングに戻ってくると、ぼんやりとしている俺をソファに呼び寄せた。すでに目の前には温くなった紅茶が苺ジャムと一緒に物悲しげに置かれている。
「シトレ少将にも困ったものだ」
 苦笑と溜息とを混ぜ込んだ言い方でグレゴリー叔父は呟くと、いつものようにジャムをスプーンですくい口に運んで紅茶を口に運んだ。
「少将にとってアントン兄は欠くべからざる一翼であったのはわかるが、あぁも気落ちされるとこちらが迷惑する」
「叔父さん」
「シトレ少将には十分な野心があるし、それを支えるだけの軍事的才能も器量もある。これまでも多くの戦友を失ってきたし、より多くの部下を失ってきたはずだが、やはり兄は別格だったという事かな。だがその犠牲を惜しんでいるあたりは、まだまだ甘い」
「軍人同士に友情がある事はいけないのですか?」
 俺が生意気にもそう問いかけると、グレゴリー叔父は一瞬驚いて俺を見つめ、それから小さく首を振って応えた。
「友情の有無が問題じゃない。ただ戦場であれば部下に対して「死ね」と命じるに等しい事態も発生する。その時失われるのが“大切な部下”か、それとも“大切じゃない”部下なのか」
「友情に差を付けるな、という事ですか?」
 俺の先読みに対して、今度こそグレコリー叔父の顔は驚愕に変化して俺を見つめたまま沈黙した。

 そんな驚いた眼で見るなよ。こちらは前世で三〇年以上生きてきたわけで、三二歳のシトレ少将も二八歳のグレゴリー叔父も
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