閑話『黄龍と狂星の過去語り01』
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四季SIDE
それはオレの中に残る最初の人生の最後の記憶。
「ごめん、他に好きな人が出来たの」
「分かった、幸せにな」
中学の頃から付き合っていた恋人との分かれの会話……。有る意味ではそれが始まりだったのかもしれない。他に好きな相手が出来たと言う彼女と別れた。未練が無いわけじゃなかった……だけど、あいつが幸せに成るならそれで良いとも思った。
まあ、一年と掛からずに別の相手から告白された日には、どんな恋愛ゲームギャルゲーだよ、と思わないでもなかったが、新しい恋人との日々が始まった。
その頃には“彼女”の事を聞かなくなった。思えば高校も別になったから疎遠になるのも当然と言えば当然だろう。……変に調べて未練が有ると思われたく無いと言う見得と、今の恋人と比べるような事をしたくないと言う気持ちから、幸せにしているだろうと思いながら毎日を過ごしていた。
そんな時だった……。
「危ない!」
道路に飛び出した子供へと向かって来る車からその子供を助け出したのは……。まあ、身代わりになって死ぬなんて事は流石になかったけど……
その子に気をつけるように言ってから立ち去った時、近道しようと思ったら工事現場で鉄筋が落ちてきたのを避けたり、線路で転んでいる老人を助けてあと少しで電車に跳ね飛ばされそうになったり……。
うん、人間とんでもなく運が悪い時ってあるよな。……多分、一日で三度も死に掛けたその日がオレにとってのそれに当たるんだろうと思う。
「四季!」
だけど、オレは油断していた。久し振りに会った元恋人に呼ばれて立ち止り、そっちを振り向いた瞬間、
「っ!?」
近くのビルの屋上に有った看板の螺子が緩んでいたのだろう、それがオレの足元に落ちたことに気付き、続いて看板の影が覆っているのに気が付いたのは……。
(間に合わないよな……。良かった此処に居るのはオレだけ……か)
死を目前にしても不思議と恐怖では無くそんな安堵だった。
(そう言えば……明日ってあいつの誕生日だったよな……)
思い浮かんだのは今の恋人の事……。泣いてくれるだろうけど……早く自分の事を忘れて欲しい、そんな事を思いながら、オレの意識は途絶えた。
二度目の人生は一言では語れないほど刺激的な日々だった。……嫌悪したくなる奴も居たけど、ある事情から一線を引きながら家族生活を送っていた。そして、高校入学を気に家族の下を離れたとき、オレと同じ《力》を持つ者に襲われる様になった。
二度目の人生を送ることに成った世界にオレと同質の力の持ち主は本来なら居ないはず。そんな疑問を抱きながら戦う日々の中、最後は敵になった兄弟とその仲間達と戦ってオレは死んだ。
そして、今……三度目の人生……
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