第百七十七話 安土城その八
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「有り難いことじゃ」
「それは何よりですね」
「そうじゃな。では」
「それではですね」
「また城に行きな」
「そして、ですね」
「働いてくる」
微笑み市に告げた。
「その間子供達のことは頼んだぞ」
「お任せ下さい」
「さて、万福丸も大きくなってきた」
「茶々達も」
「やがて縁談のことを考えねばならぬな」
「よき方を迎えましょう」
「茶々は一日ごとに御主に似てくるな」
長政は笑って市に娘のことも言った。
「あれは美しきおなごになるぞ」
「私に似てですか」
「うむ、よき相手に娶らせたいな」
「そうですね、どの娘も」
「娘達には幸せになってもらいたい」
無論だ、万福丸に跡を継がせてだ。
「そうしてな」
「そうですね、兄上ともお話しましょう」
「そうしてな。縁談のこともな」
「やがて」
話をしてだというのだった。
「進めていきましょう」
「そうしようぞ」
こうした話もした、そして。
長政は市にだ、こんなことも言った。
「それでじゃが」
「はい、今度は」
「わしは今度の戦での働きを認められた」
「本願寺、武田家、上杉家との」
「そうじゃ、それでなのじゃが」
その一連の戦の働きを認められてというのだ。
「加増して頂くことになった」
「それは何よりですね」
「次の論功で殿より正式に言われるが」
「それで、ですか」
「五十万石じゃ」
「今は四十万石ですが」
「うむ、そうなる」
こう市に話すのだった。
「有り難いことにな」
「それは何よりですか」
「それに加えてじゃ」
さらにというのだ。
「茶器や刀もな」
「褒美としてですか」
「殿は下さるという」
「「兄上も奮発されますか」
「その様じゃ、殿に弓を引いてしまったわしじゃが」
このことは長政は今でも悔やんでいる、得体の知れぬ者達に操られた父を止められなかったこととはいえども。
「それでもな」
「こうして褒美を頂けることが」
「有り難い、これからも働いていこう」
「そうですね、それでは」
「ではな」
「はい、加増もですね」
「楽しみにしておれ」
そして褒美のこともだった、実際に。
その論功の場でだ、長政は信長から直々に加増を言い渡された。そのうえその貰い受けた茶器や刀もだった。
長政はその茶器の名を聞いてだ、信長に目を丸くさせて問うた。
「殿、まことにですか」
「わしが嘘を言うと思うか」
「いえ、まことにその様なものを」
「御主に渡す」
そうするとだ、信長は笑って長政に言うのだった。
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