第二十一話 菖蒲の友人その十四
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「そしてそれはな」
「私の敗北に直結するわね」
「察しがいいな、では覚悟を決めたか」
「何度も言うけれどそうした覚悟はしないわ」
剣を持ったままの言葉である。
「別の覚悟はあるけれど」
「俺に勝つというか」
「そうよ」
その通りだというのだ。
「その通りよ」
「そう言うのか」
「ええ、ではいいわね」
「その強気は気に入った」
怪人は宙で腕を組んだ姿勢で菖蒲に言った。
「そして惜しく思う」
「私を倒すことを」
「そうだ、だがそれは俺の仕事だ」
怪人である彼の、というのだ。
「それは果たさせてもらう」
「そういうことね。ではな」
「行くぞ」
こう言ってだ、そのうえで。
怪人は再び急降下攻撃を仕掛けて来た、今度は拳で一撃を浴びせてきた。菖蒲はその一撃もかわすが今度はだった。
かわしざまの一撃は繰り出さなかった、その代わりに。
急上昇する相手にだ、その剣を。
間合いは相当に離れているが突きを幾度も繰り出した、その突きでだった。
氷の矢を放つ、その矢でだった。
宙に上がる怪人を攻める、しかし。
怪人は上に向かって飛びながら攻撃の気配を察したのか振り向いてだ、その姿勢で上に飛びつつ矢を左右に小さく動いてかわした。
そのうえで彼が望むポジションに着いてだ、こう言った。
「残念だったな」
「今の攻撃もかわしたのね」
「こうしてな」
菖蒲が見たままに、というのだ。
「かわされてもらった」
「氷の矢の動きを察したわね」
「風からな」
そこから、というのだ。
「空気の気配が変わるからな」
「それで、なのね」
「鳥は風の中を飛ぶ」
「だからこそ風の動きもわかるということね」
「そういうことだ、いい攻撃だったがな」
「そうね、そのことはわかっていたけれど」
「それでもか」
「放たせてもらったわ」
今の攻撃をというのだ。
「けれどね」
「生憎だったな」
「かわされたわね」
「見ての通りだ」
まさにと返す怪人だった。
「陸から空の相手に攻撃することは困難だ」
「そうね。けれど」
「しかしか」
「こうした言葉を知っているかしら」
怪人を見上げつつだ、菖蒲は鋭い声で言った。
「無敵の相手なぞいない」
「無敵のか」
「そして攻略出来ない相手もいないわ」
「つまり俺をか」
「倒すわ」
またこう言うのだった、怪人に対して。
「今からね」
「言うものだな、では倒させてもらおうか」
「そうさせてもらうわ。今の二回の攻防で」
それで、というのだ。
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