第2章 秘密の恋人
2-2 デート
デート
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を曲がって見えなくなったところだった。
「マユっ!」ケンジが大声を出した。マユミは振り向いた。
すずかけ三丁目の最も賑やかな紅葉通りアーケードの入り口近く、海棠家からもそれほど離れていない公園の、ブランコ横のベンチにマユミは一人で座っていた。
「ケン兄!」マユミは立ち上がり、自転車を押しながら息を切らして走ってくるケンジを満面の笑みで迎えた。
「待ったか?」
「ううん。あたしも今来たとこ」
「そうか」ケンジはにっこり笑った。
「どうする? マユ。一度帰ってから出かける?」
「そうだね、部活の荷物は邪魔だね、確かに」
「よし、じゃあ……」ケンジは言葉を切った。「えーと……」
「どうしたの?」
「母さんに何て言おう……」
「別に普通にしてればいいんじゃない? あたし平気だよ。ケン兄と街に出かけるから、って言えばいいだけじゃん」
「疑われないかな、俺たちの関係」
「兄妹でしょ?」
「で、でもさ……」
「ママの前で抱き合ったり、キスしたりするわけじゃないし」
「うーん……」
「キスしちゃったりするかも知れないんだ、ケン兄」
「いや、しないから」
二人がそこから家に帰り着くのに5分とかからなかった。
マユミが着替えて、先に階下に降りてきた。
「ケン兄と街に出かけるから、ママ。お昼はいらないよ」
リビングで主婦雑誌をめくっていた母親が顔を上げた。「ケンジと?」
「うん」
「二人で街に何しに行くのよ」
「たまにはいいでしょ、兄妹水入らずで過ごしても」
「水入らず、って、あんたたちここでずっと一緒に暮らしてるのに、わざわざそんな……」
「み、観たい映画が、丁度マユと一緒だったんだ」
後から下りてきたケンジが言った。
「映画?」
「そう」
「二人で映画観るの? 食事して?」
「そ、そうだけど」
「そんな事は彼女とやるもんでしょ?」母親は思いきり怪訝な顔をした。「それじゃあんたたち、まるでシスコンにブラコンじゃない」
「兄妹いがみ合ったらきつい、ってママ言ってたじゃん」
「そこまで仲良くしろ、なんて言ってないわよ」
「彼氏ができたら、ちゃんとその人と食事や映画に行くから」マユミはにっこり笑った。
「好きにしたら」母親は呆れて、再び雑誌のページをめくり始めた。
「何が食べたい? マユ」
ケンジとマユミ兄妹は並んでアーケード街を歩いていた。
「ケン兄は?」
「俺は何でもいい」
「それじゃ話が続かないよ。言って、今食べたいの」
「そうだなー、やっぱ肉系かな」
「いいよ。それにしよ」
マユミは笑いながらケンジに腕に自分の腕を絡ませた。
「マ、マユっ! やめろよ」
ケンジは赤くなって、その腕を振りほどいた。
「どうしてだよー」マユミは口
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