謝りと誤り
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君頼んだわよ!」
「失礼します。これからも、よろしくお願いしますね」
軽い挨拶を経た後、杏莉沙と黒子は部員に別れを告げた。
「ごめんね、テツヤくん…送ってもらっちゃって…」
「いえ、別にかまいません。」
しばらくの沈黙が、彼と彼女の間を通り過ぎた。
それでも2人は不快に思ったりしなかった。
お互い消極的な性格であるため、中学のころからいつもこうだった。
逆にお互い、中学のころを、あの帝光時代を…懐かしんでいた。
「黒子くん…今はもう、バスケが好き?」
「…はい。荻原君たちとの試合の時からは、もう立ち直っています。
もう、バスケが好きすぎて仕方ありません。」
「…そっか。良かった。荻原君も、またいつか会えるといいね…」
「…はい。」
転校したあとも連絡をとっていた2人は、お互いの学校生活のことも知っていた。
黒子がバスケを嫌いになったあの試合のことも、杏莉沙は知り尽くしていた。
「杏莉沙さんは…転校してきたのはまた同じ理由ですか…?
あのときと…」
「うん…実は、ね。テツヤくんは察しがいいなぁ。
…帝光にいたあの子が、泉真館にいたの…。えへ、笑っちゃうでしょ…」
「!!」
酷い惨劇を招いた『あの子』。
もう見たくもなかったはずなのに、それなのにまた彼女の前に現れるとは…想像すらしていなかった。
もう忘れたい過去のはずなのに、記憶がそれを許さない。
もう繰り返したくなかったはずなのに、運命はそれを許さなかったのだ。
「…今度こそ、僕が守ります。」
「テツヤ…くん?」
「誠凛で杏莉沙さんを守るのは僕だ。二度とあんなこと、誰にもさせません。
誰かがまたそんな事をするなら、僕が許しません。」
中学のころにはなかった…その強さが、杏莉沙には手に取るように分かった。
強く、まっすぐに自分に向けられたまなざしが、何よりの証拠だった。
そしてそのまなざしが、杏莉沙はとても好きだった。
落ちつく、心強い。そんな言葉がぴったりな、ゆらぐことのなまなざしだった。
「ありがとう…テツヤくん。これからまた…よろしくね?」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」
夕焼け色に染まる彼女の背中を見て、少年は一人微笑んだ。
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