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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十一話 地球制圧
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ェザーンに集結するまでに後一月から一月半はかかる筈だ。騒乱が起きるまでにさらに一月から一月半か。騒乱が起きるのが大体九月から十月にかけてだな。ガイエスブルク要塞が移動要塞になるのが十月の上旬。出兵の準備と移動要塞の運用試験と最終調整で二カ月。出兵は十二月か年を越してからになるな、スケジュールは問題無い。煮詰まって来たな、そろそろ統帥本部とも調整に入るか……。
帝国暦 489年 7月 1日 オーディン 新無憂宮 バラ園 フリードリヒ四世
薔薇を見ていると“陛下”と背後から声がした。振り返ると国務尚書が片膝を着いている。はて、何時の間に来ていたのか……。立つように言うと国務尚書は一礼してから立ち上がった。
「如何した?」
「軍からの報告がございましたので陛下にお伝えいたしたく……」
「参ったと申すか」
「御意」
国務尚書が頭を下げた。
「地球教の事か?」
「軍が地球を制圧したそうにございます」
「そうか、……信徒共は手強く抵抗したのであろうの」
「詳しくは聞いておりませぬ」
国務尚書は視線を伏せている。言えぬか……、オーディンでも酷い損害が出た。根拠地の地球ならなおさらであろう。
「地球教はもう終わりか? 反乱軍の領内でも弾圧されていると聞くが」
「おそらくはフェザーンに逃げ込むのではないかと」
「そうか、あそこは今反乱軍の支配下にあったの。面倒な事にならねば良いが……」
「それが狙いにございまする」
国務尚書が薄らと笑った。狙いか、つまりフェザーンが混乱する事を望んでいるという事か。
「出兵が有るか?」
「御意。おそらくは今年の暮れ、遅くとも来年早々には大規模な出兵が有るかと」
「ふむ、ヴァレンシュタインがそう申しておるか」
「軍務尚書、統帥本部総長も言を同じくしております」
軍の総意か。宇宙統一、とうとうその日が来るのか……。
「ではこの薔薇を見られるのも残り僅かじゃな」
「……」
「帝都をフェザーンに移すのであろう?」
「恐れ多い事ながらそうなるかと思いまする」
国務尚書がまた頭を下げた。
「良き思案じゃ。予に不満は無い、思うようにするが良い」
「恐れ入りまする。それにしてもこの薔薇園は勿体のうございますな」
国務尚書が薔薇園を見回した。
「気に致すな。薔薇などどこででも育てられる」
元々好きで始めた薔薇の世話では無かった。他にする事が無かっただけの事、未練など無い。目の前で咲き誇る薔薇を見ながら思った、未練など無い……。
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