運命の決着編
第121話 ペコとチャッキーの選択
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碧沙は病院の屋上に出た。ベンチに座って空を見ている親友に声をかける。
「もういいの?」
咲がふり返って優しく問うた。
「うん。貴兄さんも光兄さんも、起きたから。おせわしたいけど、代わりに葛葉さんと高司さんのそばにいてって、光兄さんにたのまれちゃったし。貴兄さんまで、湊さんに代わりにお礼言ってほしいって言い出すんだもの」
「さすが兄弟。じゃあ、行こうか」
咲は着けっぱなしだったドライバーにヒマワリの錠前をセットした。
「変身」
《 ヒマワリアームズ Take off 》
変身した月花は翼を広げ、碧沙に両腕を差し出した。碧沙は近寄り、月花に抱き上げられるまま任せた。
病院の屋上から飛び立つ。
目指すは彼女たちの前線基地だ。
ペコはガレージで途方に暮れていた。
舞が自力で帰って来た。それはいい。だが舞は帰るなり倒れて、目を覚まさない。今はペコとチャッキーで、簡易ベッドに横たわる舞を見守るしかない状態だ。
(こんな時、戒斗さんがいてくれたら、舞のこれが何なのか分かるかもしれないのに)
この場にいるのはペコとチャッキーだけ。舞の体調も、これからのことも、二人にしか決められない。頼れる人間は全員が出動中だ。
ガレージのドアが開く音がした。すわ戒斗か誰かが帰って来たかと立ち上がったが、それは不吉な客の訪れを告げる音でしかなかった。
「戦極凌馬……」
ヘキサを実験台にし、上司である貴虎を裏切った、最低な男。それがペコの、戦極凌馬への認識だった。
「やっぱり。舞君が帰るならここだと思ったよ」
凌馬は敵地にいる緊張など微塵も見せず、ベッド横まで来て、舞の手首を取った。脈を測っているらしい。そして顔に軽く触れて。
「まずいな。このままでは舞君の体が保たない。ここでの治療は無理か……どこか病院へ運ぼう。君たちも手伝ってくれないか?」
まるで善良な医者のように言うものだから、うっかり毒気を抜かれそうになった。
「そんなこと言ったって、今の沢芽市に医者なんていないよ!」
「私が何とかしよう。一応、医学の知識もある身だ」
どうする。ペコとチャッキーは視線を交わす。
ここで判断できるのは自分たち二人だけ。舞は重篤らしいが、預けるべき医者は凌馬と来ている。
「――運ぼう」
「! チャッキー?」
「今は舞の体が一番心配だよ。紘汰さんたちだっていつ帰るか分かんない。その間に何かあったら……だから」
「……そうだな」
それは、二人が持ちうるだけの情報を統合して出した、次善の判断。
戦極凌馬がほくそ笑んだことを、彼らは知らない。
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