七十七 結末
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彼女は暫し、目の前の光景が信じられなかった。
アマルを見て、トントンを見る。交互に往復した青い瞳は動揺のため大きく揺れていた。
「な、何やってんだってばよ、アマル…?」
身体中のあちこちに巻かれた痛々しい包帯。白い帯をつたって流れるアマルの血が、彼女の正気を取り戻す。城跡で見た壁の惨劇がナルの脳裏に浮かび上がった。
強張った唇を無理に動かし、声を張り上げる。
「ばかっ!なに勝手に脱け出してんだってばよ!?病院に戻れって…ッ」
「ごめんな、ナル」
ナルの悲痛な声は他でもないアマル自身が遮った。傷が痛むのか息も絶え絶えに、だがきっぱりと答える。
「オレは戻らない」
しかしながら、返答に反してアマルの顔は憂いに満ちていた。
「…ッ、なんで…!?」
戸惑いのあまり口ごもる。狼狽するナルの隣で、ようやく我に返った綱手が一喝した。
「馬鹿御言いじゃないよ!!いい加減にしな、アマルっ!さっさと其処から離れるんだよ!!」
「しつこい女は嫌われるわよ、綱手。たとえ師弟関係でもね」
綱手の怒号が終わるや否や、大蛇丸は嘲笑を口許に湛えた。アマルの後ろでのんびりと野次る彼を、綱手がギッと睨みつける。
「大蛇丸…お前の仕業か?アマルを誑かしでもしたか!!」
頭に血が上った綱手に詰られ、大蛇丸は軽く肩を竦めてみせた。眼を細め、アマルの頭をねっとりと見下ろす。燃えるような赤い髪に視線を這わせ、彼はようやく綱手に返事を返した。
「誑かすだなんて人聞きの悪い…説得しただけよ。そして彼女はそれに応じた……ただ、それだけの事よ」
「…ッ、嘘だ!!」
ぴくりと眉を顰める。自身の主張を真っ向から否定され、大蛇丸は軽く片眉を上げた。
その場の面々の視線がナルに集中する。大蛇丸に反論した彼女は顔を俯かせ、わなわなと拳を震わせた。現状を信じられず、必死に言い募る。
「だって…ッ、だって…アマルは…っ、アマルは…っ」
動転しつつも、アマルの無実を訴える。ガンガンと痛みが奔る頭の奥で、何処からか祭囃子の音が聞こえてきた。
思い出すのは、アマルとの出会い。
一緒に祭りを堪能し、互いの師について愚痴り合った。同じ屋根の下で共に語り合い、そして約束した。新術を見せてやる、と。
耳朶を打つ、太鼓と笛の音。立ち並ぶ屋台に賑わう人々。子どもの笑い声。
脳裏に再現される映像は、ナルに酷い頭痛を齎す。
止まぬ祭囃子。
頭痛が酷くなるにつれ、鳴り響く囃子は視界を潤ませる。
貼りつく涙を振り払い、アマルに向かってナルは声の限りに叫んだ。
「大蛇丸の部下だなんて……嘘だってばよね!?」
答えを聞くのが怖い。でも否定の言葉が欲しい。矛盾する思いを抱きながら、ナルは震える唇で友の名を呼ぶ。荒れ地に吹き荒れる風が
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