七十七 結末
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故なら彼の笑顔は…――本心を偽る事に長けた忍び、そのものだったのだから。
一方、思いもよらぬ弟子の行動に、戸惑いを隠し切れない綱手とシズネ。
二人は毒霧を挟んで、アマルと対峙していた。
「…アマル…どうして…、」
綱手の痺れ薬がまだ効いているシズネが無理に身を乗り出した。悲痛な声で問う。
彼女は初めて出来た妹弟子に一番喜んでいたのだ。だからこそ自身を『シズネ先輩』と慕ってくれたアマルに、【忍法・毒霧】を始めとする己の知る限りの術や知識を教えた。
綱手の許で共に過ごした日々は嘘偽りなどではない。それなのに何故こんなことをするのかと、シズネは悲愴感を漂わせた。
シズネを支える綱手もまた、弟子の裏切り行為に心を痛める。だがその反面、内心では(戦力を分断されたか…)と三忍の名に恥じぬ冷静さで、状況を把握していた。
大蛇丸の大蛇に呑み込まれた、自来也。ナルとパックン。そして綱手とシズネ。
綱手一人ならこの不利な情勢でもどうにか出来るが、薬で身動き出来ぬシズネを抱えたままでは難しいだろう。
毒霧を吹き飛ばすにしても、風下にナルがいるので風遁の術は使えない。口寄せの術で蛞蝓を呼び出したところで、大蛇丸の蛇の口内に自来也がいる現状では迂闊に手を出せない。闘った拍子に大蛇が自来也を呑み込みかねないからだ。
つまり現段階では、毒霧が晴れるのを待つのが得策。
瞬時にそう判断した綱手は、シズネを支え直すとアマルに眼を向けた。しかしながら弟子の…アマルの顔を見た途端、寸前までの平静を保てなくなる。
シズネと同じく綱手もまた、アマルを可愛がっていたのだ。激情に駆られる。
「アマル!今ならまだげんこつ十発で許してやる!!だからさっさとこっちに帰ってきな!!」
「つ、綱手様…。貴女のげんこつ十発はちょっと……」
青筋を立てる綱手の言い分に、冷や汗を掻いたシズネが思わず口を挟んだ。綱手の怪力で十発も殴られたら、ただでは済まない。
憤る綱手を宥めるシズネ。二人のやり取りをアマルは懐かしげに見つめる。けれどそれはほんの一瞬のことで、直後顔を引き締めた彼女は綱手とシズネに向かって深々と頭を下げた。
「ごめんなさい…先生、シズネ先輩」
唐突な謝罪に、自らの行いが間違っていると気づいたのだろうと、シズネが表情を明るくさせる。しかしながらその考えは早合点であった。
「お別れです。今まで……ありがとうございました」
告別。
だしぬけに言い渡された決別は、綱手とシズネの身体を硬直させる。絶句するシズネに対し、綱手はすぐさま問うた。平静を装うも震えた声が、辛うじてアマルの耳に届く。
「……本気、なのかい?」
師の最終確認を聞いてアマルは顔を伏せた。
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