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渦巻く滄海 紅き空 【上】
七十七 結末
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、朦々と立ち込める霧とアマルの背中。瞬く間に綱手とシズネは毒霧に覆われ、姿すら全く見えない。

「綱手のばあちゃん、シズネ姉ちゃん!!」
「おっと。君の相手は俺だよ」
急ぎ二人の許へ戻ろうとしたナルの足を、聞き覚えの無い声が呼び止めた。

慌てて周囲を見渡す。見知らぬ人間の姿を認め、ナルは目を瞬かせた。
視界に入ったのは空の色。薄い藍色の髪を肩まで持つその青年は、何の前触れもなく突如現れた。
いきなり目に留まった存在に驚いたナルが無遠慮に指差す。

「ど、どっから湧いて出てきたんだってばよ!?」
「失礼だな。最初からいたよ」
ビシッと指を差された青年は軽く肩を竦ませた。浅葱の髪をさらりと靡かせ、苦笑する。

突然現れた青年を前に、ナルは怯んだ。今までこの場にいなかった人間が、いきなり出現したのだ。警戒するなというほうが無理だろう。
ちらりと背後に視線をやる。眼の端にアマルを捉え、彼女は頭をぷるぷると振った。気を奮い立たせ、眼に力を込める。

ナルの挑戦的な強い眼差しに、一瞬青年は眩しげに瞳を細めた。次いで、ナルの傍らの忍犬に眼をやる。唸り声を上げるパックンに、少々感嘆めいた声を彼は口にした。

「睡眠薬を嗅がせたのに此処まで来るとは…流石、忍犬だね」
〈やはり、お前……〉
じろりと青年を睨むパックンに「どういうことだってばよ!?」とナルが説明を求める。

「…っていうか、睡眠薬って……」
「百聞は一見に如かず…。聞くより見るほうが早いな」
訳が分からず当惑するナルの問いに答えたのは、パックンではなく青年のほうだった。
印を結ぶ。悪戯っぽく微笑んで、青年はナルの目の前で実践してみせた。

立ち上った白煙が消えた途端、ナルの瞳が大きく見開く。あんぐりと開いた口からは何も出て来ない。
驚きで言葉を失ったナルの代わりに、パックンが苦々しげに吐き捨てた。
〈やはり…あの宿の猫か〉
「正確には、その猫に化けていたんだけどね」


ナルと自来也が滞在していた宿。
宿の主人にシュウと呼ばれていた猫は、自来也不在時にナルの許へやって来た。そこで彼女は猫の行動によって、行き詰っていた【螺旋丸】を次段階に進める事が出来たのだ。

その切っ掛けとなった猫が、今、目の前にいる。


「どういう、こと、だってばよ…?」
混乱する頭。ナルの困惑顔に、猫から人の姿に戻った青年が微かに口角を吊り上げた。再び印を結ぶ。朦々と立ち込める白煙に目を凝らしたナルは、今一度唖然とした。

細長くにょろにょろとした胴体。裂けた舌。全身を覆う鱗。今現在、黄泉沼に沈む蛇と同じ巨体。
何処からどう見ても、大蛇丸の蛇にしか見えない。
思わずナルは、自来也を呑み込み、体内の激痛に暴れる大蛇に視線をやった。だが青年の変化した蛇
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