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第一章

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 若生碧は八条大学工学部で教授を務めている。まだ二十代だ。
 少し吊り目であるが黒い部分の多い奇麗な一重の目をしている。黒髪をシャトーにして奇麗に揃えている。白い顔立ちをしており鼻の形もいい。小さな唇の色は鮮やかでまるで少女の様だ。
 だが才媛である。二十代で教授になっただけはある。工学部において知らぬ者はないまでである。その論文も研究もだ。学会において非常に注目されている。
 しかし彼女はだ。どうにもだった。
 何か常に意識しているようでありだ。周りからはこう言われているのだ。
「凄い可愛くて頭もいいのにな」
「何か自信なさげっていうか?」
「妙に意識してない?」
「そうだよな」
 それが彼女だというのだ。その資質や外見によってはではないのだ。
 そしてだ。妙にだ。
 シークレットブーツやハイヒールを履くのだった。それが彼女だった。
 そんな彼女にだ。助手の白鷺美幸は問うのであった。彼女は大学院を卒業したばかりだ。ゼミの頃から碧に教えてもらっているのだ。
 その彼女がだ。こう碧に問うたのだ。
「あの、教授って」
「何?」
「何か困ったことがおありなんですか?」
 こうだ。彼女を気遣い尋ねるのだった。丁度大学の食堂で一緒に昼食を食べている時にだ。彼女に尋ねたのだ。その時のことだ。
「何かそんな気がしますけれど」
「別に」
 碧はその少女にしか見えないその顔を曇らせて美幸に答えた。傍から見ればだ。
 姉と妹に見える。美幸は茶色がかった長い髪を後ろで団子にしてまとめている。はっきりとした二重のやや切れ長の目の睫毛は長い。細い顔をしており奇麗にメイクもしている。美幸の方が年下なのだがそれでも彼女が姉に見えるのだ。
 その美幸がだ。碧に言うのだった。
「何もないけれど」
「そうですか?」
「ええ、何もないわよ」
 また言う碧だった。
「特にね」
「そうですか。それならいいですけれど」
「それでだけれどね」
 話題を逸らす様にしてだ。碧は美幸に言った。
「どうかしら。今のこの定食」
「いわし定食ですか」
「ええ、それよ」
 鰯を焼いたものにレタスとキャベツ、それにトマトの野菜サラダ、それと若布と葱の味噌汁にたくわんだった。無論白米もある。
 ただ碧だけそこに牛乳も置いている。パックのストローのある牛乳だ。そのメニューについてだ。美幸に対して尋ねたのである。
「美味しいでしょ」
「そうですね。私鰯は元は」
「好きじゃなかったの?」
「はい、そうなんです」
 そうだと答える美幸だった。
「けれどこうして食べると」
「美味しいでしょ」
「はい、美味しいです」
 笑顔で答える美幸だった。実際にその鰯を食べなが
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