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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――3
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精鋭の精鋭達に散々ひっかきまわされたところで、最後まで司令官が健在ならいずれ大軍が数に物を言わせてねじ伏せるはずだ。俺達が勝つには、最低限あの女を始末しなければならない。
(まぁ、やってやれない事はないだろうが……)
  司令官を討った時、一番厄介なのは部下の暴走だ。制御を失い暴走した武装組織ほど厄介なものはない。周囲への被害は甚大なものになるうえ、こちらも殲滅戦しか選択肢がなくなる。そして、そうなったら終わりだ。向こうの戦力にもよるが、戦闘が長期化すればまず間違いなく殺戮衝動が抑えきれなくなる。
(組織が崩壊するか、それとも暴走するか。それを見極めている暇もないしな)
 その見極めは難しい。指揮官が討たれた場合の適切な対応法が周知されているか、それに従うだけの規律が徹底されているかといった組織の仕組みや体質の問題はもちろんとして、実際にその部隊を率いる統率者の人徳や人望、その部隊内における実際の人間関係、士気の程度、蓄積している不満など要因は他にいくつもある。
(……いや、どちらに転んでも厄介な事には変わりないか)
 自分が馬鹿げた想像をしている事に気付き、ため息をつく。どうにも思考が攻撃的だった。あの女を殺して手に入る目先の勝利に一体どんな意味がある?
 暴走しようが崩壊しようが――あるいは新たな指揮官が台頭しようが、俺達にとっての脅威が減る訳ではない。あくまで脅威の性質が変化するだけだ。
 それ以前の問題として今この世界にいる連中など、管理局のごく一部にすぎないのだ。壊滅すれば次の部隊が派遣されるだけの事である。そして、そうなれば今以上に深刻な対立状態に陥るのは避けられない。
(さすがに片手間で済む様な相手じゃあない。しかもあの女どもを皆殺しにできたとして、それで何か問題が解決する訳でもない。むしろ、増えるだけか)
 複数の世界を牛耳る組織に喧嘩を売るなど、ほんの僅かな時間稼ぎのための代償としては重すぎる。自分ひとりならまだしも、今はそうではない。それに残り時間も乏しい以上、現状維持が最も妥当か。
(だが、向こうから仕掛けてくれば応戦するより他にない)
 そうなれば、なし崩しに殺し合いが始まる。殺戮衝動に侵された今の俺では、それは止められない。そして、始まってしまえば全てが終わる。
 状況は予断を許さず、敵は厄介だが、打つ手が乏しい。つまり、窮地に追いやられつつある。それを認めざるを得なかった。
(しかし、最も差し迫った脅威が『身内』だって言うのが皮肉だな)
 目下最大の脅威は言うまでも無く殺戮衝動だった。つまり、文字通り血肉に溶けた――溶けていた存在こそが最大の脅威だという事だ。魔法使いらしいと言えば魔法使いらしい結末かもしれないが。
「あっ!」
 昼食を済ませ皿を洗っていると、隣で手伝ってくれているフェイトの短い悲
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