暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――3
[6/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
スの持ち主達を知っているせいなのか。ともあれ、彼女に料理を教えるのはそこまで難しくない。食材の鮮度や調味料の度合いを嗅ぎ分けられる鼻の持ち主というのも大きいだろう。
「いくらフェイトが優れていたって、物量で押されればそれまでだろう。最新鋭の戦車一〇台とそのせいで型落ちになった戦車一〇〇台でぶつかったら、最新鋭の方が負けるんじゃないか?」
 時計代わりにつけておいたテレビをちらりと見ながら問いかける。怪獣映画らしき宣伝で、たまたま戦車が映ったのでそう例えたが――実は機械系はあまり詳しくない。案外最新鋭の方が性能にものを言わせてねじ伏せるのかもしれないが。
「そりゃまぁそうかもしれないけど。……何か向こうにも色々事情とかしがらみとかあるみたいでね。魔導師を何人も抱えた部隊ってのはできないらしいんだよ」
 包丁の扱い――というか、その為の力加減はまだ危なっかしいが、それでも姉と比べれば遥かにマシだ。あとは単純に慣れの問題だろう。と、それはさておき。
「ほう」
 それは好都合だった。クロノの腕は決して悪くないが――それでも彼と同格の魔導師数人程度ならやり方次第では出しぬける。仮にも世界を滅ぼす怪物見習いだ。さすがにその程度の自負はある。それに、あの対応から考えられる事があった。
(あの連中が欠員が出る事を望んでいない)
 アルフの話と併せて考えれば、あの女が率いる部隊には――あるいは、管理局全体を通して人員を潤沢に使い捨てるだけの余力がない可能性は充分にあり得る。もっとも、単純に指揮官にその気がないだけかもしれないが。
(やれやれ。前者だとするなら多少は楽ができるかもな)
 いや、後者でも同じか。出し惜しみしている間に各個撃破できればそれでいい。
 しかし、予想通りだとするなら魔法使いらしからぬ組織だ。
 目的を達成するためなら、仲間――同行者どころか自分自身すら代償に捧げられる。魔法使いの組織とはそんなものだ。いや、アヴァロンやサンクチュアリ、グリムといったような大きな括りならともかく、魔物の殺害に赴く魔法使い達の多くは単なる集団であって組織ではない。欠員が出ようが、最後の一人になろうが連中には関係ない。利用価値があれば利用するし、なくなれば生贄にする。そんな関係だ。だからこそ、魔法使いにとって気の置けない仲間や相棒というのは極めて重要な――それこそ、その関係そのものがその後の生き方を左右しかねないほどの存在となる訳だが。
(いや、新世界ならそこまで殺伐とした関係ではなかったか……?)
 声にせず呟いてから首を振った。記憶が侵蝕されている。新世界の事が上手く思い出せない。記憶の代わりに流れ込んでくる、どす黒い衝動を慌てて抑え込んでから呻く。
(実際のところ、どちらが厄介かと言われるとな……)
 なりふり構わず、どんな犠牲も厭わず襲い
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ