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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――3
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唯一の例外は、自分に恭也を授けてくれた事くらいか。
 面倒事と自らの若気の至りの象徴のようなその女は、恭也を俺に預け――ついでに家から金目の物をすべて持ち去って姿を消してからもかなり長いこと……というより、ようやく忘れた頃になると夢に出てきた。妻――桃子と結ばれてからもだ。全く迷惑な女だった。それでもさすがになのはが生まれる頃にはいい加減夢にもでなくなったが。そんな女が、一〇年ぶりに夢枕に立ったのだ。不吉さを覚えるなと言う方が無理な話だ。
(衰えたな。年は取りたくないものだ)
 現役自体と比べ、明らかに衰えた太刀筋にため息をつく。衰えたのが太刀筋だけでなければいいのだが。いや、
(別に衰えただけじゃないか)
 太刀筋の乱れは身体の衰えばかりが原因ではない。自分自身の心に迷いがあるせいだ。
(今さらなんだがな……)
 今さら自分が迷っても仕方がない事だった。事態はすでに僕の手を離れ、動き始めている。そして、その決断を下したのは僕自身だった。
『本当に止めねえ気か?』
 なのはが時空管理局という魔法使いの組織に協力したいと言い出したのは、今から三日前の事だった。その日の深夜、呆れとも怒りともつかない口調でリブロムに告げられた言葉がそれだった。
『相棒が恐れていたのは正にこの状況だ。それくらいは分かっているだろう?』
 そんな事は分かっていた。この世界に危険物がばら撒かれた時点で――それを追ってユーノがこの『世界』を訪れた時点で、彼が所属する『組織』もまた迫りつつある。その『組織』に僕らが目をつけられるを恐れたからこそ、光は早々にこの家から姿を消したのだ。……それは、あらかじめ決まっていた離別だとも言える。
 もしも俺が姿を消したなら、その時は俺と関わった痕跡を全て消し去ってほしい――光を家族に迎え入れる際に言われた言葉だった。この時点で光が異界の魔法使いの来訪を予見していたかどうかは僕にも分らない。だが、それでも僕は彼の言葉に頷かざるを得なかった。理由は簡単だった。
 御神光は、妹の――御神美沙斗の『息子』であり相棒だ。つまり僕ら不破家、御神家一族の仇である奴らに目をつけられていると言う事だ。下手をすれば桃子達までが犠牲になる。あの子が姿を消すと言うことは、そういった危険が迫りつつあるという合図でもあった。傍にいれば全てから守れる訳ではない。離れたところで動くからこそ守れるものもある。それは分かっていた。だからこそ、約束していた。外から迫る脅威は光が払い、僕はこの家を――家族を守ると。
 なのはを送りだしたこの決断は、彼の願いに――約束に反するものだっただろうか。
「君だってなのはを止めようとはしなかっただろう?」
 その結論を先送りするような気分で、リブロムに告げていた。
『オレが止めて止まるような奴じゃねえしな』
 リブロ
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