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その魂に祝福を
魔石の時代
第三章
世界が終わるまで、あと――3
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際して、自らの命を投げ打って二代目ゴルロイスを守り抜いた、語られざる聖人。彼は、あえて破門される事でゴルロイスの理想を汚さぬまま彼女を守り抜いた。……全ての魔物を殺すという形で。
 言うまでも無く『殺し』は、サンクチュアリにとって禁忌だった――が、魔法使いの暴走は日々深刻なものとなっている。彼らの暴走は、ゴルロイスの理想を汚す事でしかない。一部の魔法使い――まだ若い魔法使いを中心とした彼らは、とある組織を復活させる事を選んだ。
 秘密結社アヴァロン。かつて魔法使いをまとめ上げた最大の組織であり――魔物や掟破りに対する『殺し』を公的に認められた機関でもある。もちろん、サンクチュアリにとっては血濡れた抗争を繰り広げた敵対組織だとも言える。そんな組織に彼らが着目した理由。それは、『魔法使いの掟』が、魔法使いの規範となっていたからである。お世辞にも簡単に守れるものではないが――それでも、あえて逆らうものは多くなかった。その理由の一つとして、アヴァロンという組織に対する恐怖がないとは言えまい。掟に反すれば粛清される。そんな恐怖だ。彼らはそれに着目した。
 ゴルロイスの理想を守るため、自らの手を血で汚す。そう進言し――予定通りに破門された彼らは、新生アヴァロンを設立、各地に刺客を放った。
 時に魔物を。時に暴徒化した魔法使いを。アヴァロンの名に恥じず、彼らは徹底して殺して行った。――その果てには、彼らを生贄にし続ける事で魔物化した同胞さえも。それは、まさにアヴァロンの魔法使いの生き様だった。
 それに心を痛めたのは、当時のゴルロイスだった。何故なら、彼らは元々サンクチュアリの同胞であり、手段は異なれど今もその理想のために戦っているのだから。
 だが、表向きだって協力する事は出来ない。それこそ、彼らの犠牲を無駄にする事にしかならないのだから。だから、その代わりに一つの知識を彼らに送った。
 二代目ゴルロイスが世界の終わりの中で研究を開始し、その基礎理論を構築するまでに至った代償に対する鎮静魔法。それはおそらく、いずれ現れる『名もなき人』のために遺されたもの――つまり、永劫回帰に抗う彼女なりの答えだった。そしてその魔法は、後に組織を問わず多くの魔法使いを救う事になる。……もちろん、自分も例外ではない。



 
 随分と懐かしい顔が夢に出た。
 いつもより遥かに早い時間帯に目が覚めたのはそれが理由であり、そのまま道場に足を運ぶ原因でもあった。さらに言えば、久しぶりに剣を振るう――息子や娘たちに教えるためではなく、自らを高めるべく振るう気分にさせるには充分だった。
(相変わらず俺に迷惑な女だよ、お前は……)
 夢に出たのは、恭也の母親――生みの親だった。彼女が自分にとってどんな存在だったかと言えば、おそらくそのひと言が全てを現してくれるだろう。
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