幽鬼の支配者編
EP.20 ワタル迷走
[9/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、エルザと何があったんだ?」
何も言っていないはずなのに、言い当てられたワタルは目を見開く。
「お前があんなに落ち込むなんて、エルザ関連以外にねえだろうが」
したり顔でそう言うマカオだが、その表情は真剣そのもの。エルザに関する事でワタルに言うとすれば、冷やかしや煽りと言ったからかいしかなかったため、ワタルは戸惑ったが……意を決して話し出した。
「……誰かに言った方が楽になるかもな……そうだよ」
「喧嘩か?」
「いや。ただ……俺が先走って、勝手に傷ついて勝手に塞ぎ込んでたんだよ」
自嘲しながら、ワタルは包帯が巻かれた右手を眺めると、掻い摘んで説明し始めた。
「――――で、逃げ出してきたってわけか」
「逃げ出すって……まあ、そうなるか。そうだよ」
数分後、あらかた話し終えてそう締めくくったワタルは溜息を吐くと、話が少し長くなってしまったので、気を利かせたロメオが用意した水を飲んでのどを潤す。ちなみに、ロメオが食事の用意を始めた瞬間、マカオはジョッキに酒を用意した。
マカオを肯定すると、ワタルはそのまま続ける。
「無様なもんだろ? エルザの好意に仇で返そうとして、そのまま逃げだしたんだ。自分がこんな屑なんて、正直思いもしなかったよ」
自嘲の笑みを浮かべて自分を嗤うワタルに、マカオは口を開いた。
「……まだ自分に酔う余裕があるなら、大丈夫そうだな」
「なに?」
『自分に酔う』
それは自分が悲劇のヒーローぶっていると言われたのだろうか……そう感じたワタルは心にチリチリと燻るもの――怒りに眉を顰めてマカオを睨んだ。
「だってそうだろうが。自責っつーのは、自分に余裕があるからできるもので、言い換えれば独善みたいなもんだ。お前の独り善がりなんて聞かされたって、こっちは胸糞悪いだけなんだよ」
「独り善がりだと? 俺は……」
「なら、なんであんなところで一人で落ち込んでた? 独り善がりじゃないっつーなら、エルザの傍にいて、誠意を込めて謝れば済む話じゃねーか」
「それは……」
怒りを抱いたワタルだが、マカオの指摘に言い返せず、唇を噛んで俯いてしまう。黙り込んでしまったワタルに、マカオは表情を緩めると、今度は柔らかい口調で言った。
「まあ、そうだな……お前がそう言う感情を持っちまうのも仕方ないさ。初恋、なんだろ?」
「…………」
沈黙は肯定と同意だった。
耳を赤くして顔を背けるワタルに、マカオが酒を飲みながらのにやけ顔にカチンと来たのか、ワタルも言い返す。
「じゃ、じゃあ、マカオはどうだったんだよ?」
「どう、って?」
「初恋だよ、初恋。苦い思い出の一つや二つ、あるんじゃないの?」
ワタルの質問に、マカオは目を瞬かせ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ