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FAIRY TAIL 星と影と……(凍結)
幽鬼の支配者編
EP.20 ワタル迷走
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 中は一言では言い表せなかった。
 ベッドやクローゼット、テーブルやイス……と、家具は整理されているし、部屋も清潔に保ってある。華美とは言えず、むしろ質素と言えるだろう。
 だが、所々にちりばめられた小物が、質素な部屋で異彩を放っていた。ソファに置いてあるクッションはハートマークで装飾されており、普段のワタルからは想像できない程可愛いもので、壁に掛かっている時計や食器棚の皿やマグカップなども同じことが言えたのだ。

「ああ、それエルザの私物――というか殆どそうだろ、確か」
「そのままじゃ殺風景すぎるしな」
「いいんだよ、最低限衣食住が整ってれば。ったく――」
「あ、何これ?」

 エルザに苦言を呈そうとしたワタルだったが、ハッピーの声で中断した。否、その手に抱えた物を見れば、せざるを得なかった。

「洒落たノートだな」
「日記帳かしら?」
「おお! 見てみよーぜ!」
「……おいこら」
「「「「げ」」」」

 本人の前で私物をあさり、堂々と日記を広げようとする不届き者たちに拳骨で制裁を加えると、彼らに食事の準備を始めさせたワタル。だが、もう一人残っていた。
 その残った一人……エルザはワタルを、いや、彼の持っているノートを見つめていた。

「……なんだよ」
「……」
「幾らお前とはいえ、流石にこれは駄目だからな」
「ああ、分かっているよ……チッ」
「今舌打ちしたよな? 日記なんて、他人に見せるような物じゃないだろうが」
「分かってるって……ほら」

 納得してくれた事に安堵しながら、ワタルが日記帳を元の場所において元の椅子に座ると、エルザは手を差し出した。

「なんだよ?」
「タオルを貸せ。まだ濡れてるぞ」
「自分でやるよ。子供じゃないんだから」
「いいから」
「……ん」

 難色を示したワタルだったが、有無を言わせないエルザに折れて首にかけていたタオルを渡す。
 すると彼女はワタルの後ろに回り、強くだが丁寧に頭にタオルを当てていく。

「……」
「…………なあ」
「ん?」

 始めは不服そうだったワタルだが、タオル越しに感じられる華奢な指の感触と丁寧な手つきに、しばらく彼女に為されるがままにしていた。
 そのままワタルは食事の準備にてんやわんやになっている3人と1匹の様子をなんとなく見ていたのだが、エルザは不意に手を止めると声を掛けた。

「私の今の目標はな、ワタル……お前と対等になる事なんだ」

 魔導士としても、もう一つの意味でも……声には出していないが、エルザは胸中でそう付け加えた。
 ワタルからすれば突然の告白……いや、宣言だ。藪から棒にもほどがあったため、驚いて振り向こうとしたのだが、結構な力で頭を押さえられているため視線を動かすのみにとどまった。
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