幽鬼の支配者編
EP.20 ワタル迷走
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妖精の尻尾のギルドの地下1階。
そこは、普段は物置ぐらいにしか使われていないのだが、今は所属魔導士のほとんどがそこに集まり、騒いでいた。
もっとも、普段のように明るく陽気に喧嘩や酒盛りに興じているものではなく、暗い怒りに満ちた陰気な雰囲気に包まれていたが。
「……重い空気だな」
「仕方ないだろう」
思わずといった風に漏らしたワタルの呟きをエルザが諫める。
ガルナ島から帰還した彼らは、半壊したギルドの前でミラジェーンに遭遇した。彼女によれば、ギルドの半壊は幽鬼の支配者の魔導士の犯行とのことだ。
フィオーレを代表する魔導士ギルド・幽鬼の支配者と妖精の尻尾は犬猿の仲で、仕事先で両者の魔導士がかち合えば小競り合いが起きるのが常である。
少し周りを見ただけでも、ファントムに対する怒りの声を上げる者や報復を提案する者、それを宥める者で溢れており、ギルド中を覆いつくすような負の感情に、ワタルが辟易するのも無理はなかった。
今、ガルナからの帰還組はミラジェーンの後を付いて行く形でギルドの地下を歩き、マスターたるマカロフの元へ報告に向かっていたのだが……
「よっ、おかえり」
ギルド全体が陰気な雰囲気の中で、彼らを迎えたマカロフはいつものように酒を飲みながら片手を上げて軽く声を掛けただけだった。
「じっちゃん!! 酒なんか飲んでる場合じゃねえだろ!!」
周りが荒れた雰囲気に包まれている中、不自然なほどにラフな挨拶をする彼にナツが噛みつく。家も同然のギルドを壊されたのだから、ただでさえ直情的なナツが怒るのも無理もないのだが、マカロフが取り合う事は無かった。
「おー、そうじゃ……おまえたち! 勝手にS級クエストなんぞに行きおってからに!! 今から罰を与えるから覚悟せい!!」
「え!?」
「はぁ!?」
「それどころじゃねえだろ!!」
ギルド半壊という異常事態によって罰の存在が脳内から吹き飛んでいた3人が驚くも、罰の内容はマカロフのチョップ一発と言う軽いものだった。ルーシィだけはお尻を叩かれるという半分セクハラのようなものだったが。
今まで黙っていたエルザだったが、彼に態度がふざけているようにしか思えず、声を荒げた。
「マスター!! 今がどんな事態か分かっているんですか!!」
「ギルドが壊されたんだぞ!!」
彼女に続いたナツの怒りの声にも、マカロフはいつもの調子を崩そうとせず、頬杖をついて宥める。
「まあまあ、落ち着きなさいよ。騒ぐほどの事でも無かろうに。ファントムだぁ? 人のいないギルドなんか狙って何が嬉しいのやら」
「人のいない……?」
「ええ。やられたのは夜中らしいの
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