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無欠の刃
下忍編
人間+化け物÷2
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たらしい狐の耳が揺れ、毛並みがぶるぶると震えた。

 びくりと、その様子に若干ビビったサクラは、それでも苦無を構えて白を守るように立つ。
 彼女は、白には興味がない。
 けれど、本能で分かっている。忍びとしてのまだ未熟な勘と、何よりも鋭い女としてのが告げている。
 カトナは彼を殺す気だと。
 そして。

 ここで彼を殺せば、カトナによくないことが起こると。



 一方、カトナはそんなサクラの様子に気が付かず、必死にがたがたと震える指をおさえつけ、思考を繰り返す。

 はやくはやく殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなければ。敵は排除するんだ、しなければいけないんだ、しなきゃ、しなくちゃ、ぜったいにしなきゃ。
 じゃなきゃ、―じゃなきゃ!!




 「サスケを、なおせない!!」




 カトナの怒声が、響く。
 優先度の問題。
 現在危機的な状況であるサスケと、大切な誰かを傷つける可能性がもつ敵。どちらが軍配が上がるかは、その時の状況にもよるが、今現在に限って言えば、敵の排除の方が大切だった。
 だって、サスケを治しても、敵を先に排除しなければ、また、サスケが傷つけられてしまう可能性がある。だから、先に敵を排除しなければいけない。
 はやく、敵を殺して安全な状況にして、サスケを直してもいいという判断が出なければ、優先度を高くしなければ、サスケが、手遅れになる。
 ぞっとして、カトナは唇をかみしめて、
 はやくはやく、治したいのに、サスケを元通りにしてあげたいのに、サスケを死なせたくないのに、なのに、どうして邪魔するの!! と。
 カトナは泣き叫ぶ。

 「治してあげたいのに!! ころさなきゃ、なおせれないのに!!」

 あああ、と叫び声をあげて、カトナは薙刀を構え、一気にサクラと白の元へと走り寄る。

 彼女は化け物になった。それでも、なりきれたわけではなかったのだ。
 感情を総べて殺せたわけでも、思い出をすべて忘れたわけでも、自らの心を殺しきれたわけでもないのだ。
 だって、それは出来なかった。
 それは、『ナルト』の望むことじゃ、なかった。
 カトナが全てを殺してまで、ナルトはカトナに守られたいなんて思わなかったのだ。『ナルトの望みを―思いを優先する』というその目的は、結局、どこまでもナルトの思いを重んじてしまう。
 ゆえに、カトナは化け物になりきれず、中途半端に人間の部分を残してしまっていて、いっそ、化け物になれたならば、なりきれたならば、楽だったのに、人間の部分が残ってしまった。

 結局、カトナは、人間の部分と化け物の部分が歪に混ざってしまった。

 人間であるカトナは、サスケを死なせたくないと、救いたいと祈り。
 化け物であるカトナは、サスケはどうでもいい
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