#10『その名は日常』
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キングが見るという過去の時代の記憶は、良い物なのだろうか。それとも、悪夢のようになる時もあるのだろうか。
重くなりかけた空気を立て直そうと、メイはキングが饒舌になりそうな内容を探す。
「……次はどこに攻め込むの?」
結局出たのは、暗い内容だったが。
「そうだな……前回の反逆が思いのほかうまく行ったからね。いくつか必要だったステップはすっ飛ばしていいかもしれない。とりあえず、今はリビーラが有益な情報を持って帰ってくることを祈るだけさ」
そこまで聞いたところで、メイは彼の言葉に奇妙な違和感を覚える。
「あれ?リビーラって出かけてるの?」
「そっか、言ってなかったっけ。リビーラはね、一応は《教会》の高官だから、定期的に《王都》や高位ランク箱舟に出かけてるんだ」
なるほど、今日の朝は彼が部屋の前に待機していなかったのも分かった。廊下を歩いていても一度も遭遇しなかったのはなぜなのだろう、と思っていたのだが、そう言うことだったのか。
しかし、となるとまた新たな疑問が生まれる。
「大丈夫なの?リビーラの正体はばれたりしないの?」
「もちろん、彼が反逆者であることはほとんどの人間が知らない。ソーミティアの支部長は何も知らないからね。彼を目撃した雑兵のほとんどが死んだし」
「……必要犠牲、って言われたら納得するしかないけど……なんか、気分のいいものじゃないわね」
メイが思い出すのは、初めてリビーラが現れた時に、彼の《刻印》魔術に打たれた雑兵たちや、逃亡の最中にリビーラが毒殺した若い雑兵の姿だった。
彼らが死んだ瞬間のことを、メイはよく覚えている。そのほかにも、《ファーストリべリオン》の際に死んでいった雑兵の姿も。
できれば、彼らのような死者を出さないで問題を解決したいと願っている。だが、それが難しいことはあの時知ったし、できるだけ我慢するように自制もすることにした。
キングはそんなメイに微笑みかける。
「そうだね。できる限り死者を出さないようにはつとめているし、恐らくはもうそこまで雑兵と戦う必要はなくなって来るだろう。あと一、二回反逆を繰り返した後は、上位ランク《箱舟》に進軍する。そのためには、まず一人、必ず仲間に引き入れておきたい奴がいる」
「仲間に?」
「そう」
キングはこくり、と頷く。彼は初めて会った時、「今回の時間軸には過去の仲間たち全員が転生してきている」と言っていた。彼らはキングやククリのように元から記憶を保有していたり、メイのように記憶を持っていなかったり、何らかの情景をトリガーにして記憶を取り戻す、などのパターンに分けられるらしい。そのうちの一人だろうか。
「かつての仲間の一人に、《時間妖精》という種族の奴がいた。あい
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