第二章
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第二章
そのうえでだ。彼女はブラッディマリーを飲みながらその音楽を聴くのだった。そうして時間を過ごそうとしていたがそこにだった。
隣にだ。若い男が来たのだった。
彼女と同じ褐色の肌を持っているが黒い直毛はアフリカ系のものとは少し違っていた。そしてはっきりとした二重の黒い目に薄い唇の横顔が見える。鼻が高い。
アメリカだけにいるヨーロッパ系のものも入っているアフリカ系の彼が彼女の横に来たのだ。そうして彼はこうマスターに言うのだった。
「マスター、いいかな」
「いつものやつだね」
「うん、ジントニック」
彼はだ。そのカクテルを頼むのだった。
「それを御願いできるかな」
「いいよ。それじゃあね」
「それと音楽は」
音楽は何かを言おうとした。しかしだった。
ここでだ。彼は今かけられている音楽を聴いてだ。こうマスターに言うのだった。
「これでいいよ」
「そうそう、あんたはいつもこの曲だよね」
「うん、やっぱりこの店に来たらね」
「そうだね。決まってるよね」
「じゃあいいよ」
この曲でだ。いいというのだ。
「聴かせてもらうよ」
「わかったよ。それじゃあね」
マスターは音楽をいじらなかった。そうしてだった。
彼はそのジャズの音楽を聴く。その彼にだ。
キャスリーンはカクテルを手にしてだ。声をかけたのだった。
「ねえ」
「どうしたんだい?一緒に飲みたいっていうのかい?」
男は軽やかなアメリカンジョークで彼女に返した。
「それなら願ったりだけれどな」
「そうよ。一緒にね」
その通りだとだ。キャスリーンは顔を正面に向けたままくすりと笑って述べた。
「この曲を聴きたいのよ」
「この音楽をね」
「どうかしら。いいかしら」
「ジャズ好きなんだな」
「好きだから聴くのよ」
だからだとだ。キャスリーンは今度は声を笑わせて答えた。
「そうなのよ」
「そうか。あんたもこの曲が好きなんだな」
「思うところがある時に聴くには一番の曲ね」
「そうだな。確かにな」
「貴方もそうかしら」
自分はそうだと答えたうえでだ。彼に尋ね返した。
「思うところがある時に聴くのかしら、この曲は」
「ああ、そうさ」
これが男の返答だった。キャスリーンの予想通りであった。
「だからだよ」
「同じね。よかったわ」
「人間ってのは難しいものだからな」
男の横顔が笑った。キャスリーンはその顔を横目で見た。端整で何処か陰のある笑みだった。
「だからな」
「それでなのね」
「ああ。今日は特にな」
「あったのね」
「ったくな。色々あるさ」
飲みながらだ。彼は言うのであった。
「仕事ってやつはな」
「何もない仕事はないわね」
「おかしな客が来たり訳のわからないことになったりな」
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