暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外16『海坊主』
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たメリー号がビビのいる岬へと向かうために自分から離れていくことも感じながら、ハントは打ちあがった噴水の頂点にまで飛び上がり、それら噴水が勢いをなくし、ただの海面へと戻ろうと落下を始めるタイミングを見計らって、それに合わせて右手の手刀を振り下ろした。

 標的はメリー号の突き進む東。その一角を担っている2隻の海軍船。

「魚人空手『海の宝刀(マリン・スパーダ』」

 噴水がハントの手刀を受けて大きな一刃と化し、東に陣取っていた2隻の海軍船へと襲い掛かった。

 クロコダイルの『砂の宝刀』を明らかに真似た名前の通り、見た目もそっくりだったが何よりも威力までもがそっくりな技らしい。船が避けるにはあまりにも早すぎるその鋭い一刃を受けた海軍船が2隻まとめて両断された。
 この技はもちろん、ハントが師匠ジンベエから教わった技では決してない。クロコダイルとの対戦を経て、ハントが独自に今編み出した技だ。

 ――足りなかったのは経験と……それに。

 ふっと息を抜いて、東へと抜けようと海を行くメリー号の後ろ姿を見つめる。
 ハントの仕事はこれだけでは終わらない。このまま東を抜けることが出来てもこのままではすぐに、今残っている船に加えて後ろから姿を見せている『黒檻のヒナ』の直属の艦隊が追いかけてきて東の港へと接岸する暇すらなくなってしまう。

 それでは意味がない。ビビを船に迎える時間がなければ意味がないのだ。

 ――ビビ……来るといいけど。

 なんとなしに空を見上げてハントは思う。これが本心で、自分がメリー号に帰った時にビビがそこにいてくれるのが一番いいとハントは思っている。ただ、心のどこかで認めたくはないが来ないのではないか、ともハントは思っている。

 王国のことを考えてバロックワークスに侵入し、より深い内部情報を探るためにオフィサーエージェントへと昇格し、ただひたすらに国と国民のことを考えて、ビビは生きてきた。その彼女が王女という立場を捨てて海賊になるか、それがハントには想像できない。

 例えばビビの代わりとなる後継者が存在しており、そして例えばアラバスタ王国がほとんど無傷でほとんどの被害がこれまでになかったというのならハントにもビビが仲間として海賊になってくれるというのはわかる。ただ、少なくともハントが知る限りビビがいなくなった時に国にとって正統な後継者はいなくなるし、クロコダイルが起こした事件によってアラバスタは様々な爪痕をまだ残している。

 だから、あくまでも国のことを第一に考えて生きてきたビビが海賊として来てくれるというイメージがわかない。
 とはいえ左腕の×印に誓った通り、やはりハントもビビやカルーのことを大事な仲間と既に想っている。軽くその印に視線を送り、ため息を吐く。

 ――ま、それは船
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