第九話 Cooreat
[5/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
かなかった。
リアルでの僕は、俳優だ。
昔から、演技が好きだった。
子供の頃から、ごっこ系遊びが好きで、友達とよくやっていた。
中学生になって、演劇部に入って、部長まで上り詰めた。
もちろん、容姿に恵まれていたからってのもあっただろうし、努力を怠らなかったのも大きい。
高校になっても相変わらず部活三昧で。
大学には進まず、俳優になるために専門学校へと進んだ。
講師達からも褒められ、この時、学校を卒業したら、俳優になるのは間違いないと思っていた。
その考えは……何一つ間違っちゃいなかったんだ。
僕は俳優になった。
けれど、違った……。
求めていた理想と、現実が、あまりにも違うものだったんだ。
暫くの間は下働き。
俳優だけじゃ生きていけないから、バイトもこなして。
寝る暇も惜しんで、演技に磨きをかけることと。
バイトで必死に成果を残そうと、酷い残業もこなした。
僕は頑張った。 ただ只管に。 理想を求めるために、頑張ったんだよ。
けど……。
「オイ! そんな演技じゃダメダメ! 全然なりきってないよ! やる気あんの? これでリテイク何回目?
ねぇ君、君一人でみんなに迷惑かけてるんだよ? 君がここちゃんとやらないと、次に移れないの、わかる?」
「はい……すみません……」
現場監督から怒られ、周りからも冷たい目で見られ。
撮影が終わっても、裏で陰口を叩かれ続ける日々。
容姿が幾らよくてもダメだ。
演技が幾らうまくてもダメだ。
それが、現実だった。
「あのさぁ。 須藤クンだっけ? ああ、そうそう、須藤 敬一クン。 君さぁ、ぶっちゃけAVとかの男優になった方がいいんじゃないの?
はっきり言って、演技はスカスカだし。 ただ綺麗にやろうとしてるだけだよね。
この業界、君みたいなの幾らでもいるんだよ。 まぁみんなすぐやめてっちゃうんだけどさー。 替わりは幾らでもいるからいいんだけどね?
君、見た目は色男だし、AV女優とかには好かれるよ? ああ、あれだね、ホストとかでもいいかもね! ハハハハハ!」
綺麗ってなんだ……スカスカってなんだ……。
ただ、一生懸命、言われたことをやろうとしているだけなのに……。
「まーた須藤か。 君、演技ヘタすぎ。 リアリティ全然ないじゃん。 棒読みと一緒だよ。 この業界ナメてんの?
台本に書かれてあることが全部じゃないんだよ。 察しろよ! こっちもこれで飯食ってんだから、お遊戯じゃないんだよ?
君もこれで飯食っていきたいんじゃないの? なぁ?」
リアリティってなんだよ……!
棒読みなんかじゃないっ……!
僕は、やるべきことをやっているだけなんだ!
僕の演技は、間違ってなんかいない!
「ほら見ろよ、先輩のあの演技。 うま
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ