暁 〜小説投稿サイト〜
少年少女の戦極時代U
禁断の果実編
第118話 フェムシンムの滅び
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 戦場は川辺に移っていた。
 紘汰だけが上から見える。戒斗は――いた。河原と森の境に倒れている。

『紘汰くん……』

 咲はきっとすぐにでも紘汰の下に降り立ち、彼の盾となりたいだろう。だが、碧沙を抱えて飛ぶ月花はそうしない。碧沙が腕の中にいるから。

(わたし、ずるい子だ)

 ロシュオが倒れた紘汰に歩み寄り、斬鉄剣を揮おうとした――その瞬間だった。

 突如としてロシュオの背後に、空気から滲み出すようにレデュエが現れたのは。
 ぶわりと、厭な予感が溢れ返った。

「王さま、よけてええええ!!」

 碧沙の叫びも空しく、レデュエが放った光弾は、呆気なくロシュオの体を貫いた。


『フッ……ハハハハハハ!! 油断召されましたなァ、王よ!』
『レデュエ……!』

 月花が碧沙を抱えて着地した。

「王さま!」
『来るな!』

 ロシュオの声の圧力に、駆け寄ろうとした碧沙の足は地面に縫い止められた。月花もまた同じようだった。

『この瞬間をずっと待ち焦がれていた。黄金の果実。世界の全てを弄ぶ力が、ワタシのものに!』

 レデュエはロシュオに開いた穴から手を突っ込み、ロシュオの身体から金に輝くリンゴを取り出した。嘲笑が河原に木魂する。
 しかし、そこで、見ていた碧沙たちにさえ、信じがたいことが起きた。

 レデュエの手の中にあった果実の黄金が褪せ、ただの腐った林檎に成り果てたのだ。

 レデュエは腐った果実を投げ捨て、自らの王であるはずのロシュオを蹴り倒した。

『ロシュオぉ!! 言え! 本物はどこに隠したぁ!!』

 レデュエがロシュオに馬乗りになって殴りかかる。

『我らフェムシンムは、ぐ、役目を、終えた……愛する者よ、ぐはっ、これで私もお前のもとに……』
『ふざけるなぁ!!』

 レデュエは杖槍をロシュオに何度も、何度も、癇癪のやまないコドモのように突き立てる。

『いいかげんに――しろぉぉぉ!!』

 ついに月花が動いた。ヒマワリフェザーを機動し、レデュエを切り裂こうとした。レデュエは忌々しげに飛びのいて避けた。

 その隙に碧沙はロシュオに駆け寄った。

「王さま、王さまっ」
『グ、フ……死ぬまで、離れぬ、か、ジュグロンデョ、よ……』
「いいえ、いいえっ。ただ心配だから。ただあなたという人がキズついたから、わたしたちはそばに来ただけです」

 ――ロシュオはシドを殺した。しかし、碧沙はその件でロシュオを恨んではいなかった。正確に述べると、恨んではいたが、死んでしまえと思うほどではなかった。12歳の少女の情念の限界だった。

 むしろ、舞を通して孤独な王を見る内に、碧沙の中に彼に対する情が芽生えた。


「レデュエぇ!! お前みた
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ