禁断の果実編
第117話 見届ける
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「高司さんになにをしたんですか?」
『黄金の果実を体内に埋め込んだ。これであの女は“はじまりの女”になり、知恵の実を与える選定者となる』
「はじまりの……女」
ロシュオはようやく碧沙をふり返った。
『お前も去るがいい、ジュグロンデョの片割れよ。今の私にもはやお前の加護は必要ない。私はフェムシンムの長として、最後の責務を果たす』
「いいえ。わたしはここにのこります」
『何故だ』
「今あなた、最後のって言いました。なら、最後くらいだれかがいないと、さびしいと思います」
ロシュオは受け入れなかった。しかし、拒みもしなかった。
舞が帰ってからどれくらい経っただろうか。
玉座の後ろにもたれていた碧沙の耳に、足音が聞こえた。二人分だ。走って来ている。
『来たか。黄金の果実を求める者よ』
「貴様がロシュオか」
『いかにも。お前たちがオーバーロードと呼ぶモノの、王だ』
「舞をどこへやった」
『案ずるな。すでに元の世界に戻した』
この声は、葛葉紘汰と駆紋戒斗だ。
碧沙は飛び出したかったが、堪えた。自分がいると知っては、彼らの最後の戦いに水を差す。
(高司さんが新しいセカイを見届けるなら、古いセカイの終わりは、わたしが見届けます)
戦いの狼煙は、ロシュオの側から上げられた。
碧沙はこっそり覗く。シドの時と同じだ。ロシュオの手から放たれる圧力が紘汰と戒斗を岩に押しつけている。その暴威の中にあってなお、彼らはライダーに変身した。
しかし、ロシュオは高く浮かび上がり、彼らを不可視の力で捉えて遠くへ投げやった。
碧沙は玉座の陰から出て彼らを追った。
――ロシュオは圧倒的だった。斬鉄剣を自在に揮い、植物を使い、テレポートし、圧力を飛ばす。いくら鎧武とバロンの二人がかりでも勝率は低い。
(咲の大事な人たちが傷ついてく。ごめんね、咲。それでも何もしないわたしを、ゆるして)
赤い暴風が吹き荒れ、鎧武とバロンを木に叩きつける。
『お前たちが何の覚悟もなく私の前に立ったのなら、死をもって償う他ない!』
近づきすぎた。このままでは碧沙もこの熱風に焼かれてしまう。
(最後まで、王さまの、そばにいなきゃ、いけない、のに……兄さん、咲……!)
瞬間、ふいに浮遊感があって、熱が消えた。
気がつけば碧沙は空の上にいた。自分が飛んでいるのではない。ヒマワリアームズの月花が、碧沙を抱えて空を飛んでいたのだ。
「咲! どうしてここがわかったの?」
『なんかヘキサがいるような気がして。そんで見たらほんとにいるんだもん! びっくりしたよ』
「咲!」
不安定な姿勢も構わず、碧沙は月花にしがみついた。
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