第3話、昇進
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デツキーは舌打ちしたくなるのをこらえた。振り返ると国防委員長はラデツキーに握手を求めた。いつの間にかカメラの砲列が、ラデツキーと国防委員長を狙っている。
ラデツキーは慌てて国防委員長と固い握手を交わす。
「国防委員長閣下。お褒めに預かり光栄です」
「実に素晴らしいパーティーだ。招待してくれて感謝しているよ」
「招待状くらいおやすいご用です。実は閣下の秘書がこのパーティーの開催に協力して下さいました」
「気にしなくて構わんよラデツキー君。あれは才気あるから何かあれば気軽に相談してくれたまえ」
「はっ、ありがとうございます」
「少し、これから話をできないかね」
「小官で良ければお付き合いします」
「まあ、そう警戒しないで楽にしてくれたまえ。なに話というのは我々の今後についてだ。実はホーランド提督から君の話をよく聞かされてね。一度ゆっくりと話をしたいと思っていたのだよ」
ラデツキーと国防委員長は連れ出って、パーティー会場にある個室に向かう。国防委員長は護衛や秘書などを従えていたが彼らは外で立ち番となった。
「まずはめでたい話をしよう。ホーランド大将の強い推薦と私のちょっとした手伝いで君の昇進が決まった。少し早いがおめでとうラデツキー中将」
「ありがとうございます。国防委員長閣下のご高配に感謝いたします」
自分が昇進出来ると思っていなかったラデツキーは、内心驚きつつも笑顔でお礼を言った。
当然だが階級は上にいくほど狭き門が立ちはだかる。しかも中将といえば艦隊司令官になれる階級だ。ラデツキーは素直に昇進を喜んだ。
「中将に昇進する君を統合作戦本部勤務にする案もあったのだが、ホーランド提督がどうしても首を縦にふらなくてね。英雄の希望だ。君にはもうしばらくの間、第十一艦隊の参謀長をやって貰うことになるだろう」
「はっ」
「ところで、第三次ティアマト会戦についての君の報告書を読ませて貰ったが、まさにホーランド提督英雄叙事詩で素晴らしいものだった」
「ホーランド提督の活躍に相応しい報告書と自負しております」
国防委員長の発言に皮肉を感じとったラデツキーは、警戒心を抱きながら慎重に答えた。
「誤解しないで欲しいが、私は英雄に相応しい報告書に感謝しているのだ。しかし、これでも私には情報を教えてくれる軍の知り合いが多くてね。国防を預かる身としては報告書に載っていない、会戦の率直な感想を聞いておかねばならないのだよ」
「それはオフレコの私見ということでよろしいのでしょうか」
「もちろん誰かにここでの話を漏らす気はない」
「分かりました。正直申し上げますと、第三次ティアマト会戦は敗北と紙一重の勝利だったと考えています」
「……ほう。是非その理由を拝聴したい」
「指揮命令系統の混乱、各艦隊の連携不足など、問題点は枚挙にいとまがないですが、や
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