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【短編】竜門珠希は『普通』になれない【完結】
JK黒魔導師竜門珠希の憂鬱
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けるようになってから出直してこい、このバカ娘。
 あと自分で自分のことを可愛い妹とかいうな。それはあたしが保証してやるから。
 外見は誇らしい妹の唯一の弱点ともいえる学力を心中で(なじ)りながら、ストーカーのようにつきまとっては背後で喚く愚妹(いもうと)を完全無視し、残り20分を切った中で珠希はスープを煮込みながら必要な数の食器を準備していく。
 その手際の良さは手慣れている何よりの証だ。珠希本人としては嬉しくもないが。

「聞いてるのおねーちゃんっ!?」
結月(アンタ)がお兄ちゃんの分の晩ご飯を作ったら聞く」
「それじゃ無理ッ!!」
「早っ!? 諦めんの早いし!」

 あまりに小気味よい結月の返答に、思わず珠希はツッコミを入れてしまった。
 前述のとおり、結月の弱点は学力。お菓子しか作れない母とは違って一般的な料理もできなくもないのだが、実際は珠希が家事を掌握しているとおり、たまにする程度。しかもベタでありがちな展開がここで発動してしまい、無難に作ればいいところでアレンジやら創作料理やらをするタイプだった。しかもその創作料理が基本的に激マズだと自覚しているのがさらに厄介である。

「無理なモノは無理! 無理なことはしないっ! それがあたしの座右の銘だし」
「座右の銘の意味は?」
「え? あ……っと、う〜ん……。モットー的な? 何かそんな感じでしょ?」

 やっぱダメだこの娘。
 正解してはいるが、絶対に知識として身についていない。

「とりあえず結月。この食器テーブルに並べといて」
「うん。わかったー」

 先程の姉妹喧嘩になりそうな雰囲気はどこへやら、珠希の頼みごとを素直に受け取った結月は食器を手に持ってダイニングテーブルに向かっていった。
 もはや結月の今日の件については何も言うまい。もう少し煮詰めたほうがよさそうだとスープの味見をしながらそう心に誓った珠希だった。



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