JK黒魔導師竜門珠希の憂鬱
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ゃん』
『誰に言ったのよ。あたしは聞いてないよ?』
突然の兄、帰宅宣言。
一人暮らしとはいっても、実家からは電車で小一時間ほどの距離に住んでいることもあってか、今までにも何度かこういうことはあったが、今までは事前に連絡があった。今回はそれがないだけに、兄の分まで夕食の量を計算していなかった。おかずは一人当たりの量を減らすなり何なりでどうにかなるが、一台しかない炊飯器が稼働中の今、主食までは何ともならない。
現在時刻、午後6時37分。今から竜門家の――珠希の要望をメインにして揃えられた――システムキッチンの一角にあるガスコンロで土鍋使ってご飯を炊こうにも時間がない。そして脳内マニュアルだけで土鍋でご飯を炊ける現役女子高生もそうそういない。
これは最悪、スーパーかコンビニでパックのご飯を買ってきてもらうしかないかも。そう考えを巡らせていた珠希の耳に、兄はいつもの間延びしたような声で返してきた。
『んー、こないだ電話に出たの結月だったから結月に言ったよー。今日俺自宅に帰るから珠希に言っといて、って』
『へえ、ほー。結月に、ねえ……』
ダメ母の次は愚妹か。
せっかく鎮まった心中の活火山に再び火をつけかねない事態に、珠希が思わず手に持っていた子機にヒビを入れてしまいそうになったのはご愛嬌だと思ってほしい。
『うん。だからさ――』
『あのねお兄ちゃん』
『んー? なにー?』
『できたらね……、できたらでいいんだけど、お父さんとお母さんとあたしの分だけでいいから、何かデザートがほしいなぁ』
兄が末っ子の結月を可愛がってるのは珠希も知っていたが、できるだけ可愛い妹を演じて、声を作って電話の向こうの兄にお願いをしてみた。
すると、若干の間が空いたものの基本的に弟妹に甘い兄から気前のいい返事が返ってきた。
『ん、別にいいよー。でも結月の分は?』
『結月の分ならいらないんじゃないかな。お兄ちゃんが帰ってくるのをあたしに言い忘れてたみたいだし』
『……え? あ、ああ。そうなんだ』
『ホント、仕方ないコだよねー』
『えー、あー、うん。まあ、そうだねー』
『それじゃあ、お兄ちゃんのお土産のセンス、楽しみにしてるねっ』
『あ、ああ。うん、任せとけー。それじゃっ』
少しずつ珠希の口調や声色ににじみ出てきた怒りを察知したのか、兄もどこかたどたどしい答えを返しながら、下手に珠希の逆鱗に触れないよう会話を進め、逃げるように電話を切った。
通話の「切」ボタンを押し、子機を元に戻した珠希を大きく鼻から息を吐き出す。
まだ女子中学生の愚妹・結月は帰らず。珠希はできるだけ素面を装うことにして――とはいえ能面のような表情だったため、他人からは何かあると
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