Rainy Heats
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光だけが残る。
表示されている画面には機体の状態がリアルタイムに表示されているが、全く変化しない。内容に飽きたのか、あてもなく機体内部のデータベースをクローリングする。その間も周辺の検索はかかさず行うが。
周辺地図を表示してみると、等高線と機体の位置を示す三角形、目標値地点が幾つかポイントされたマーカー、そして僅かな地名が表示された。
「秋葉原、か」
ここはかつて秋葉原と呼ばれた、若者の趣味と享楽であふれた土地、らしい。この砂礫が広がる平野が、だ。
地名に触れると過去のデータベースに残っていたと思われる情報がウィンドウに列挙される。
そして最後までスクロールすると『2578/08/31雨による壊滅を確認』とだけ残して秋葉原に関する記述は終わっていた。
「また、雨」
ため息にも似た、雨への嫌悪。だがおそらく、現在の世界に雨を好む者は少ないだろう。
突如、車内に赤色の照明が灯り否応なくぼんやりとしていた意識を覚醒させられる。
雑多な情報を表示していたウィンドウも閉じられ、最低限まで絞り込んだ周囲の情報を細かく表示していた。
そして先程まで秋葉原の情報があった平野に新たな点がポイントされる。
赤色の、丸。
『敵だよ!敵!』
車体に搭載されたOSから放たれる金切り超えにも似た音声。そう、敵だ。私の、私達の。
外部に搭載されたカメラで地図にポイントされた位置の映像を表示する。
だが、映された映像は濃い霧と雨のみを映すだけ。だが、それも知った上での行動だ。即座にカメラのフィルターが置き換わり、全く別の世界を映した。
緑の地平に、黄色の空、青の雨、そして地面に薄く広がった赤色の何か。
その赤に青色が混じり、積み重なってゆく。さながら、板を重ねあわせて積み上げる積み木だ。
それが、徐々に積み上がり形を成して行く。足と腕は鶴橋の様に尖り、細身の人を模した形状だった。
ここまで来ればフィルターは必要ない。フィルターを解除し、先ほどの荒野が広がる世界を映し出した。
変化していることがあるとすれば雨が小ぶりになり、霧が晴れていたこと。
そして映し出されていたナニカは、人の形をしたナニカに変貌していた。それは、氷でできた結晶体だった。
だが、顔に相当する場所には一つ大きな目だけが存在し、それ以外の部品はない。手の先には指がない、関節もない。
奴らは、雨が凍りできた存在だ。たが、ただの氷ならばそれで良いが、こいつは動く。
観察するうちに胃の当たりがむかむかとし、胃酸が喉元まで込み上げてくる。
―――――やっぱり、ダメだ。
奴らは私達にとってそんな存在なのだ。見れば吐き気がするし、気持ち悪い。
だからこそ―――――はやく、殺したい。
こんな気持ち悪い事になるのはあいつ等のせいだ。早く殺してさっぱりとした食事がしたい。早く殺して、昨
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