禁断の果実編
第114話 伝わるもの A
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『かはっ!!』
月花はレデュエが操る植物に囚われ、柱に思いきり叩きつけられた。その衝撃とダメージで咲の変身は解けた。
翠の杖槍が、柱にもたれて咳き込む咲の喉に突きつけられた。
「紘汰、くん、に、何、したのよ」
『オマエ、さっきからそればっかりだね。そんなにカズラバコウタが大事?』
「だい、じに、けほっ、決まってん、でしょ!」
『ふうん? ジュグロンデョにもそんな情緒あるんだ』
レデュエは馬鹿にするような相槌を打ち――杖槍を引いた。
『ワタシが今コイツに見せているのは、ただの悪夢ではない。いずれコイツの身に降りかかる現実だ』
「紘汰くんに?」
そこで夢うつつのように鎧武が言葉だけを発する。
『俺は、みんなを救う力が欲しくて――だからオーバーロードになるしかないって――』
オーバーロードになる。
そんな悲しい決意を、咲の知らないところで、紘汰はしていたというのか。
そこまでして紘汰は人類を、世界を救おうとしていたのか。
『オマエは運命を覆す者として、世界の外側に立つしかなくなる。オマエはもう人間ではないのだ』
『でも俺はっ……誰も傷つけようとしてるわけじゃない……』
『関係ないよ。力を手に入れたことで、オマエはこの世界における法則を逸脱した。違反者であり侵略者。人々にとっては恐怖の対象でしかない』
『人を守るために戦おうとしてもか……』
『そんな言葉を誰が信じる。もうオマエの声に耳を貸す人間などいるものか。理解するより、憎むほうが遙かに容易いからね』
咲は痛む体を押して、柱に縋りながら立ち上がった。腹にはまだ戦極ドライバーを着けている。戦う力を喪ってはいない。
「どきなさいよ」
咲はヒマワリの錠前を取り出し、低い声でレデュエに告げた。
『オマエ……』
「どけってあたしが言ってんのよ!!」
肺腑の底から、人生で一度もないほどの怒声を上げた。
レデュエは少しの間を置き、鎧武から離れた。
「変身」
《 ヒマワリアームズ Take off 》
装着したライドウェアの紅い模様が碧に塗り替わり、三対の翼が装甲された。
月花は鎧武の前までようよう歩いて行って、ふわりと浮き上がった。
そして、鎧武を力一杯――抱き締めた。
「紘汰くん」
呼びかける。ただそれだけ。深い気持ちは、言葉にすると陳腐になってしまうから。
(紘汰くんはまだ世界にいるよ。イツダツなんてしてないよ)
「紘汰くん」
ヒマワリ色の翼を巻きつける。月花の腕の長さでは包みきれない鎧武を包むために。
(だれが、どんなに責めたって、あたしが紘汰くんの味方になるから)
「紘汰くん」
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