禁断の果実編
第112話 兄弟の結末
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煙を上げて機能停止した。
「光実君、光実君!」
湊はすぐさま光実のマスクを外した。貴虎のほうはザックがマスクを外していた。
「ここは任せた。俺は葛葉を追う」
「気をつけろよ」
「誰に言ってる」
戒斗は不敵な笑みを残し、ホールを出て行った。
「あんたはどうする」
「私?」
「急いで連れ出しても、街の病院は機能してない。どうしてもミッチと貴虎さんを何とかしたいんなら、沢芽市を出て市外の病院に行かねえと」
ザックは湊に、ここで戦線離脱するかを問うているのだ。
(光実君に思う所がないと言えば嘘になる。彼を撃ってしまった日からずっと、抜けないトゲのようなものがある。マスクしてたのに、まるで撃ったあの時、この子は私に笑いかけたように見えた)
光実を改めて見下ろす。
こけた頬。目の下のクマ。ガサガサの唇。骨張った両手。スーツに隠れた体も痩せこけてしまっているだろう。
「――手伝って。私じゃ光実君はともかく、主任を外へ運べないわ。駐車場にさえ行ければ、私の車があるから」
「それが答えか。了解、湊さん」
湊は光実の腕を自身の両肩に回させ、光実をおぶった。そして、貴虎を背負ったザックと共に、ホールを出て、タワー下層階を目指した。
この兄弟にかける余情はこれで最後だと、己に言い聞かせながら。
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