第2章 秘密の恋人
2-1 恋人同士
恋人同士
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8月4日。金曜日。
朝食のテーブルで、ケンジとマユミは平常通りを装っていた。しかし、二人の心の中は、すぐ隣に座った人への想いでいっぱいだった。
「マユミ、今日はよく食べるわね……」
母親が怪訝な顔で言った。
「成長期だからね」
「何言ってるの。あんたもう高二じゃない。そんなに食べて今から成長するのは体重だけよ」
マユミの横でケンジはクスッと笑った。
「昨日まで朝ご飯なんかほとんど食べなかったくせに……」
母親はマユミの前にドレッシングを置いた。マユミはそれを手にとって、生野菜に掛けた。
「何か嬉しい事でもあったの?」
「うん。あたしの人生で、たぶん最高の出来事がね」マユミは無邪気にウィンクをした。横にいたケンジは、思わず飲みかけたコーヒーを噴き出しそうになった。
「へえ……。いったいどんな事なのかしらね」
母親が、それ以上マユミに食い下がる気配はなかったので、とりあえずほっとしてケンジはコーヒーを飲み干した。
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学校に到着し、自転車を降りた所で、ケンジは胸ポケットのケータイが震えるのを感じた。
彼はそれを取り出し、画面を見た。マユミからのメールだった。
『ケン兄、今夜はあたしの部屋に来て。一緒にチョコレートタイムしよう』
ケンジは自分の顔が一気に上気するのを感じた。そして思わず頬の筋肉が緩んだ。
「どうしたんだ? ケンジ」
不意にケンジの背後から声がした。ケンジはびくっと身体を震わせて振り向いた。
「なんだ、拓志か」
「なんだ、はないだろ? おまえ何顔赤くしてんの?」
「え?」
「ケータイ見ながら、何にやにやしてんだよ」
「べ、別に」
ケンジは大きなバッグを担いで、焦ったようにさっさと部室に向かって走り去った。
夕方、部活が終わって、部員たちがプールに併設されたジムのミーティングスペースに集まっていた。
「ケンジ、おまえ今日、えらく調子よかったじゃないか」
ケンジの隣に座った康男が言った。
「タイムもずいぶん伸びてたようだが」
「たまにはそんな日もなきゃ」ケンジは爽やかに笑った。
康男は怪訝な顔をした。「なんだ、その幸福そうな顔は」
ケンジたちの向かいに座った拓志が身を乗り出した。「何かいい事あったのか?」
「確かにいつもと雰囲気違うな」康男も言った。「言え! 何があった」
「言えないね」
「もしかして、彼女でもできたか?」
「ふふん……」
「『ふふん』? 何だ、余裕かませやがって」
「やっぱ彼女か」拓志が鋭い目でケンジを睨み付けながら言った。「そうか、さっきのはその彼女からのメールだったんだな」
康男が言った。「卑怯者。抜け駆けしやがって」
「何が抜け駆けだ。俺はおまえたちとそんな取り
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