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藤村士郎が征く
第1話 別の世でも血生臭さからは離れられず裏の仕事に今日も勤しむ
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知されバラされる寸前に、先代組長である藤村雷画と共に来た“若”と呼ばれている少年に救われると同時に、自身の歳の半分くらいの少年の器の広さに惚れ込み、今では従順に藤村組内で日々充実した日々を送っている。

 とはいえ、その時以降から彼の中で別の野心が芽生えている。その野心とはズバリ――――。
 “若”の専属の護衛である。別に先代当主である雷画の護衛に不満がある訳では無いが、どうせなら自身が惚れた男の下で働きたいと言うのが利信の希望だ。
 因みに、現在の“若”の護衛を務めているのはNo.3の石蕗和成(いしぶきかずなり)と言う上位に位置する壁越えの剣の達人だ。この男も“若”に魅せられた一人である。

 話は戻るが、声を掛けられている男は利信だけでは無くあちらこちらとまるで親しい知り合いに挨拶する様に話しかけられていた。詰まる所、藤村組の人間は、冬木市内は勿論の事近隣住民からも慕われていて、何か緊急的な事態が起きた場合に限るが、警察の方から非公式であるが何かしらの捜索のために応援を頼まれる事すらもあるのだ。言ってしまえば、非公認の治安維持部隊の様なものだった。少なくとも現地の住民からすれば。

 そんな護衛の男たちが川神院近くの住民たちから慕われている時に、院内の総代を務める川神鉄心の私室に雷画と鉄心は将棋をしていた。

 「久しぶりじゃのう、雷画。こうしてお主と将棋を指すこと自体久しぶりに感じるわい」

 パチッ
 鉄心の歩がまた一つ雷画の領内を侵す。

 「まぁ、実際そうじゃからのぉ。お互い随分老いぼれたがまだまだやることが多いしのぉ。特にお主は問題児を二人も抱え取るんじゃろぉ?」

 パチッ
 雷画の歩もまた鉄心の領内を侵す。但し、言葉と共に傷口をなぞる様に。

 「むぅ、そうじゃが・・・そう言えば例の件、考えてくれたかのぅ?」

 パチッ
 更に歩は進むが勢いに覇気が見られない。

 「例の件?・・・なんかあったかのぅ?」

 パチッ
 思い出そうと考えるあまり進める駒の位置を間違える。

 「うちの百代との件じゃよ」

 パチッ
 容赦なく間違えた駒を取らんとして更に歩を進める。

 「・・・あれか・・・って、儂にケンカ売っとるんか!鉄心!!」

 バチッッ!
 叩き付けて付ける様に指すものだから、全体の駒がややずれる。

 「なんでそうなるんじゃ・・」

 パチッ
 あくまで冷静に対処する鉄心。

 「そうなるにきまっとるじゃろうが!折角二人を切っ掛けに、ヨーロッパとの間での事が沈静化されつつあるのにも拘らず、儂の手でそれらを破り無かった事にしろとでもいうのか!?そうなれば、間違いなく即時開戦になる!あちらからすれば、勢力で負けていようとも戦争になるぞい!」


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