第二部
第二章 〜対連合軍〜
九十八 〜虎牢関〜
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項には変わりがないか。
「歳三様。ともあれ、中に入りましょう」
「そうですね。ご主人様もお疲れでしょう」
「……そうだな」
二人に気を遣わせてしまうとは、私もまだまだだな。
四半刻後。
二人を伴い、城壁に登ってみた。
かなりの高さだ、万が一足を滑らせればまず助かるまい。
「見通しが良いな」
「はい。この通り晴天であれば」
閃嘩は前方を指さす。
「あの通り、シ水関も視認できます」
「うむ。思いの外、近いようだな」
指呼の距離、とまではいかぬが、肉眼でもその全容は確かめられる。
「ご主人様。何をお考えなのですか?」
朱里が、私を見上げて言った。
「……この二つの要塞を如何に活かすか。朱里、お前なら如何致す?」
「そうですね……。シ水関で敵を引きつけ、痛手を与えます。守勢のまま、矢石を切らさなければ攻めあぐねる筈です」
「ふむ。それから」
「折を見て、後方を攪乱します。輜重隊を襲わせるのも手でしょう」
「さすれば、敵は進退窮まり、行き詰まる……そうだな?」
「はい」
ふむ、悪くない。
問題は、いつまで持ちこたえられるかだな……。
「朱里。打って出る事はしないのか?」
閃嘩の言葉に、朱里は手を顎に当てて、
「戦況次第ではそれもありでしょう。ただし、一当てするに留めます」
「だが、敵が戦意を失っていたとすればどうなのだ? そのまま一気に壊滅させる事も可能な場合もあるだろう」
「はい、それは仰る通りです。……ただ、敵には曹操さんや冥琳さんがいます」
閃嘩が眉をひそめた。
「誘いの罠、それに引っかかる事も考慮に入れろと?」
「その通りです。もし、そのせいで将の誰かが傷ついたり失われれば……」
朱里は溜息をつく。
「我が軍の士気は落ちる……か」
「はい」
実際、連合軍は華雄を討ち果たす事で士気が高まり、シ水関は陥落した。
「朱里」
「は、はい」
「シ水関が陥落した場合……いや、陥落する事を前提に策を練っておくのだ」
「ご主人様?」
「歳三様!」
朱里は困惑し、閃嘩はいきり立った。
「言った筈だ。勝てぬ喧嘩はせぬ、とな」
「し、しかし。その為に負ける前提に立つなど」
納得がいかぬか。
「無論、ただシ水関を明け渡すつもりはない。後は、お前達で考えよ」
「は、はあ……」
ぎこちなく、朱里は頷いた。
「自信がないか?」
「そ、そうじゃありません。ただ……」
「ただ、何だ?」
「……ご主人様には、本当に私のような存在が必要なのでしょうか? 時々、そう思ってしまいます」
「本当に、そう思うか?」
「はい、ご主人様は戦場の機微を読み取る事に長けています。いえ、それだけじゃありません」
「確かに、歳三殿は武人としての腕前も一流だ。そういう事か?」
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