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戦国異伝
第百七十七話 安土城その三
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「安土城は東国から都の入口にある、だからじゃ」
「この城自体を結界とされましたか」
「北国から都には延暦寺があるな」
「はい」
「延暦寺は正した、あそこは大丈夫じゃ」
「しかし東国からの道は」
「そこが危ういと思ってじゃ」
 だからこそ、というのだ。
「安土の城はそうしたのじゃ」
「城そのものに神仏の力を集め」
「そうした面からも国を護るな」
「護国の城ですか」
「左様じゃ。この城は天の城でもある」
「天、とは」 
 信長のその言葉にもだ、細川は問うた。
「一体」
「この城には帝がお休みになられる場所もあるがのう」
 それだけでなく、というのである。
「この城の部屋の一つにある」
「ではそこに今より」
「うむ、入ってな」
 そうしてというのだ。
「御主達に見せる、よいな」
「はい、それでは」
 細川ガ応えてだった、その他の者達もだった。
 天主の中の階段を登っていった、その階段も櫓のそれとは違い見事なものだ。その階段を登っていってだった。
 ある部屋の襖を開けて中に入った。その中には。
 あらゆる神仏が描かれていた、その四面に。そうしてその奥の座にだった。
 主の座があった、信長はその座を見せて彼等に言った。
「ここがわしの部屋や」
「城の主であられる殿の」
「その場ですか」
「帝の座される場はさらに上にあるがな」
「ここは、ですか」
「殿のおられる場ですか」
「ここには天、そしてあらゆる神仏の力が集まる」
 そうなるというのだ。
「わしはここで神仏の力を受けてな」
「あやしき者達をですか」
「倒されますか」
「そうする、少なくともこの城はじゃ」
 安土城は、というのだ。
「ただの城ではない」
「城そのものが」
「結界ですか」
「都を護る」
「そうしたものですか」
「そうじゃ、ただ政をし敵を防ぐだけでなくな」
 信長もそこを強く言った。
「都をよからぬ者からも護る城なのじゃ」
「そういえばどうも」
 雪斎もここで語った、僧侶だけに感じ取ったのだ。
「一向宗も」
「あの者達もじゃな」
「一向宗は灰色です」
 その色はだ、まさにその色こそ一向宗なのだ。
 だが、だ。織田家が戦ってきたその一向宗の多くはだったのだ。
「しかしあの闇の衣の者達は」
「顕如殿にしても」
 今度は石田が言ってきた、先の上杉との戦において見事兵糧や武器の手配をしてみせた彼がである。
「我等から見れば妙なことを仰っていました」
「知らぬとは」
 その石田と共に働いた大谷も言ってきた。
「面妖な」
「しかし嘘を吐いてはおられなかった」
 ここでこう言ったのは生駒だった。
「間違いなく」
「はい、そうです」
「どう見ましても」
「その目はです」
「全くでした
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