第百七十七話 安土城その二
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「そうしてな」
「築かれましたな」
「山はよい」
守りにというのだ。
「安土山はそれを考えてもな」
「よき山だからこそ」
「使った」
城にというのだ。
「そうしたのじゃ」
「左様ですな」
「そうじゃ、ではな」
「これから山に入り」
「詳しく中を見ようぞ」
「わかりました」
こう話してだ、そのうえでだった。
信長はその安土城の本丸に入った、そうして天主閣のところまで行くと。
その巨大さにだった、あらためてだった。
皆息を飲みだ、見上げつつ言った。
「いや、これは」
「こうして間近で見ますと」
「凄いですな」
「塔どころではありませぬ」
「全く以て」
「これが天主閣ですか」
「そうじゃ、わしもはじめて見るがな」
信長だけは違った、彼等と同じく見上げているがそれでもだ。確かな笑顔になっていてそのうえでこう言うのだった。
「見事じゃ。この天主こそがじゃ」
「これこそが」
「何というのありますか」
「天下を見るに相応しい」
そうした場所だというのだ。
「まさにな」
「この天主閣こそが」
「天下布武の場であり」
「しかもですな」
「さらに」
「天下を治める場所じゃ」
天下布武のその後のだというのだ。
「まさにな」
「では殿、今から」
「この天主の中に入り」
「そうしてですか」
「そのうえで」
「中も見るぞ」
実際にそうすると言う信長だった、そしてだった。
彼は家臣達を連れ天主の中に入った、するとだった。
吹き抜けの天主はまるで御殿だった、一気に上まで見えていて。
回廊の、螺旋さえ思わせる階の左右には襖が並んでいる。その襖の一枚一枚、まさにその全てにだった。
見事な絵が描かれている。細川がその絵のうちの一枚を見て言った。
「これは狩野永徳の」
「わかったな」
「はい、その絵ですな」
「うむ、絵師達に描かせたものじゃ」
その通りだとだ、信長は細川にも答えた。
「一枚一枚がな」
「そうでしたか」
「そしてな」
「さらにですか」
「うむ、ここには仏や神の絵もありじゃ」
そしてというのだ。
「耶蘇のものもある」
「あらゆる神仏がいますか」
「そうじゃ、そもそも城の石垣の石もな」
それもだった。
「墓石や地蔵のものじゃが」
「それもですな」
「あれは神仏の力を集めたのじゃ」
「殿はそう仰っていましたな」
「どうも気になってな」
信長はふとだ、目も鋭くさせた。それで今はこう言うのだった。
「天下によからぬ者がいるのではと思ってのう」
「鬼ですか」
「鬼か、若しくは土蜘蛛か」
「そうしたあやかしがですか」
「ああした者達を感じてな」
それでだったというのだ。
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