第百七十七話 安土城その一
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第百七十七話 安土城
一行は岐阜から安土に向かってだった、三日でだった。
その安土に来た、安土はまだ小さな町だ。しかしその町を見ながらだ、信長は家臣達に会心の笑みで言った。
「この町がすぐにじゃ」
「大きな町になると」
「そう仰るのですな」
「そうじゃ、必ずな」
こう言うのだった。
「じきになるぞ」
「そういえばあれは」
ここで羽柴は見上げた、安土山を。
これまでは只の山だった、しかし今の山はというと。
幾重にも壁、山を螺旋の様に囲んでいるそれに覆われてだった。櫓も門もそれこそ数えきれないだけあり。
しかもその頂上にだ、驚くべきものがあった。
青瓦の五層七階だった、しかもその一番上は。
赤く塗られ黄金にも輝いている、まるでこの世のものではないかの様な絢爛たる巨大なものだった。それを見てだった。
羽柴は息を飲んでだ、こう言った。
「一体何であろうか」
「天主じゃ」
信長はその羽柴に確かな笑みで答えた。
「あれはな」
「天主とは」
「そうじゃ、天主閣じゃ」
それだというのだ。
「城の真ん中にありそこから全体を見渡すな」
「塔の様なものですか」
「そう考えよ、あそこからじゃ」
信長はその笑みで彼自身も天守閣を見上げながら語る。
「わしは見るのじゃ」
「天下をですな」
察しのいい羽柴はすぐにこう返した。
「それをですな」
「その通りじゃ、あそこからな」
「ですか。それにしても」
羽柴はまだ言うのだった。
「あれはこれまでなかったですな」
「そうであろう。櫓はあってもな」
「はい、あれは」
天主閣はというのだ。
「ありませんでした」
「しかしこれからは違う」
「城にはですか」
「あれが出来る」
天主が、というのだ。
「あらゆる城にな」
「あそこから見渡せば」
今度は滝川が言ってきた。
「戦にも使えますな」
「その通りじゃ」
「ですな。城全体が見渡せます故」
「そのこともあってじゃ」
「あれを築かせましたか」
「その他にもあるぞ」
信長は確かな笑みのまま言葉を続ける。
「あそこにはな」
「といいますと」
「後は中に入ってからじゃ」
「あの天主の中に」
「そうじゃ、それからじゃ」
わかるというのだ。
「そのことはな」
「それではですな」
「これから安土城に入りな」
そして、というのだ。
「あそこに皆で登るぞ」
「わかりました」
「それでは」
織田家の家臣達も応える、そしてだった。
信長は彼等を連れて城の中に入った、城は堀はないが壁が幾重にも囲みしかも櫓は相当に多い。守りはかなり堅そうである。
しかもだ、山は高い。その城を進んでだった。
林がだ、こう信長に
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