第二十一話 菖蒲の友人その十
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「付き合わないことよ」
「それが第一だよな」
「薊ちゃん嫌いな人とは」
「最初から話をしないさ」
絶対に、という口調での返答だった。
「お互いに不愉快になるだけだしな」
「無視するのね」
「ああ、そうしてるよ」
こう言うのだった。
「ただ。いじめとか意地悪とかしてたらな」
「その時はなのね」
「そういうの嫌いだからさ」
だからだというのだ。
「止めるけれどな」
「何もない時はなのね」
「無視する主義なんだよ」
「それが一番ね」
菖蒲も薊のその言葉に頷く。
「私にしても同じよ」
「菖蒲ちゃんもなんだな」
「自分から進んで不愉快になることはないわ」
「だよな、そこは」
「私は人を無理に好きになる趣味はないわ」
菖蒲はそうした考えだ、好きになれない相手を努力してまで好きになろうとは思わない。そうした考えの持ち主なのだ。
それでだ、今もこう薊に言うのだった。
「そうしてもいいことはないから」
「ないか」
「努力しても好きになれない人はいるわ」
相性の問題もある、このことは。
「そうした努力をすることは無駄だから」
「無駄な努力ってないっていうけれどな」
「人の好き嫌いはね」
「性格悪い奴を好きになれとかな」
「嫌いな食べものを努力して食べて好きになることには意味があるわ」
食べられるもののレパートリーが増える、これはいいことだ。
しかしだ、嫌いな人間を無理に好きになろうとすることはというと。
「けれど嫌いな相手を好きになることは」
「嫌いなもの食うより難しいか」
「遥かにね」
そうだというのだ。
「そして結局はね」
「好きになれないか」
「そう、だからしないの」
最初からというのだ。
「この世で唯一の無駄な努力だから」
「ネットの荒らしとかそうだよな」
薊はここで例えを一つ出した。
「そうした奴ってな」
「無理に好きになろうとしても」
「無駄だよ、そういう奴って心が病んでるからな」
残念ながらそうした輩も世にはいる、しかも自分達を正義として行動し下劣な行動や書き込みを繰り返すから始末に終えない。
「ヤクザやゴロツキみたいな性根の連中がな」
「そうした人には何を言っても無駄だし」
「好きになろうとしてもな」
「無駄よ」
まさに無駄な努力だというのだ。
「だからしないことよ」
「そうなるか、やっぱり」
「そうしたことはしないから」
菖蒲は薊だけでなく他の面々にも言った。そうして。
その話の後でだ、裕香が六人に言って来た。
「ところでね」
「ところで?」
「ところでっていうと」
「うん、今度化学の授業でね」
話すのは学業のことだった。
「実験するけれど」
「確か水酸化ナトリウムを使うわね」
「ええ、あれか
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