第二十一話 菖蒲の友人その七
[8]前話 [2]次話
「幸せに育って生きてきてるわね」
「本当にね」
「孤児ってそれだけで辛いと思うけれど」
菫もだ、よく言われている常識から話す。
「私達の場合は」
「そうですね、本当に」
桜もだった、微笑んで言う。
「幸せに過ごさせてもらっています」
「確かに孤児っていうだけで」
菖蒲は再び言った。
「辛い状況にあるけれど」
「その辛い筈の状況でもな」
「ええ、私達の場合は幸せな状況にあるわね」
薊に再び言ったのだった。
「暖かい家庭の中にいて」
「だよな。しかもな」
「こうして皆がいて」
「開陽姉妹もいるしな」
薊は二人のことにも言及した。
「あの娘達もな」
「二人で住んでいて」
「幸せに過ごしてるみたいだよ」
「そうね、クラスにお友達もいて」
「恵まれてるよ。恵まれ過ぎてて」
薊はこれまで笑顔だった、だが。
その笑顔をだ、ここで締まった顔にさせてそしてこんなことを言った。
「失いたくないな」
「ええ、それはね」
「何があっても」
「そのことは心から思うわ」
本当に、というのだ。
「幸せだからこそ」
「この幸せ失いたくないな」
「何があってもね」
そう思っているというのだ。
「そう思うわ」
「だよな、要するにあたし達の場合はな」
「生き残ることね」
「怪人連中と戦ってな」
「そういうことね。だから」
「怪人の出処を突き止めてな」
そのうえでだった、このことについては。
「そこを潰さないとな」
「怪人達を倒すだけでは」
「ああ、基がそのままだからな」
「何にもならないわ」
「まずは巣から」
薊は怪人を虫に例えて言った。
「それをどうにかしてからか」
「そういうことになるわね」
「だよな、そこは」
ここで薊は一同を見回した、しかし今は智和がいない。薊は彼がいないことについて菖蒲に対して問うた。
「先輩は生徒会か」
「ええ、そうよ」
「生徒会長も大変だな」
「それに化学部の部長でもあられるから」
「化学部ってどんな活動してるんだよ」
「色々な実験や研究をする部よ」
それが化学部だというのだ。
「理系のね」
「授業の化学みたいなのをか」
「そう、やる部活なのよ」
「じゃあマグネシウムとかを出して」
具体的な例をだ、薊は話に出した。
「水に入れたりとかか」
「石鹸を作ったりしてね」
「じゃあオリーブオイルとかで」
また具体的な例を出す薊だった。
「石鹸作ってか」
「使ったりしてね」
「それも中々面白そうだな」
「そうね。先輩らしい部活ね」
「だよな、先輩理系だしな」
文系の方も出来るが智和の本領は理系だ、そちらで学年一の優等生になっているのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ