10話、寄り道
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ョコバーを見せてオーケーサインを貰うと、可愛らしい少女にチョコバーを差し出した。そして母親が恐縮したところを見計らい本題に入る。
「ところでこちらの会社の方ですか」
「はい」
「出来れば駐車場に止まっている車両や器材をお借りたいのですが」
「ええ構いません。夫も義父も亡くなりましたし、今の私には不要のものです」
俺が礼儀で車を借りたいと言ったことに未亡人は気づいたのかもしれないが、いずれにせよ気持ちよく借りられたことは有り難いことだ。
「助かります。カギの場所を教えてくれますか」
「カギは事務所にあります。どうぞこちらへ」
俺は車と倉庫のカギを預かった。その上で未亡人達の未来について話合うことにする。
「これからお二人はどうするつもりですか?」
「あの、出来れば、同行させて欲しいのですが……」
未亡人の声が尻すぼみになる。慶太から俺達が一般人であると聞かされており、軍や警察ならともかく自分達が負担になると気づいているのだろう。もちろん、工場車両のことで多少は貢献したという打算もあるはずだ。
俺は改めて未亡人を見た。髪は乱れまくりだが、よく見たら美人だ。それに謙虚でそれなりに聡明ときたら、保護欲をさそう。
もちろん、ほんの一瞬、チラっと浮かんだ考えだ。あくまでもたまたま困っている人がいて、たまたま俺の気分が手を差し伸べたくなったという話に過ぎない。
「いくつか条件がありますが従っていただけるなら構いませんよ」
俺は契約書を差し出した。一応言っておくが性的なものは一切ない。あくまでも一般的な問題で俺に従うよう求めているだけ。
未亡人は若干躊躇したが結局子供と一緒にサインした。俺はカギをキャリーに渡し、車のエンジンをかけて調子を見るよう命じてから嫌な仕事に取りかかった。
「少しよろしいですか」
レグロンを従えた俺は衛生兵に少女を任せ、未亡人だけを外に連れ出した。未亡人は若干怯えたようだったが、比較的しっかりとした足取りでついてくる。
「このようなことは聞きたくないのですが、義務としてお尋ねします。ご遺体をあそこに並べているのですが確認されますか?」
未亡人はしばらく俺を見つめてから、視線を並ぶ遺体に向けて小さく頷いた。
「あの、よろしければご一緒していただけませんか」
未亡人はこの親子よりご遺体慣れしていないことを知らないで頼んだのだろう。断りたいというより一緒に見てご家族のご遺体の前で、失神したり吐いたらどうしよう?
誰かアンドロイドに任せようと思ったが、結局「わかりました」と頷き、俺は死体の検分に付き合うことになった。
夫人が顔を見て首を横にふったご遺体は、これまでのゾンビだったご遺体と同じように、遺品を調べ顔写真を取りビニールに包む。
しばらくして夫人が青い顔をさらに青くして、立ち止まった
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