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Element Magic Trinity
神と罪
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「それは……どういう、事だ?」
「君にも解っているはずだ」

気づけば掠れていた声が、尋ねる。
淡々とした声で、ジョーカーが答える。
ナギを殺した犯人を自分の手で捕まえる為に、大好きだったギルドを抜けた。一緒にいた妹と弟と離れ、評議院の第一強行検束部隊隊長の立ち位置にまで来た。どんなに苦手な書類整理や堅苦しい会話があっても、ナギの為に辞める事をしなかった。
やっと、犯人が解ろうとしている。やっと、捕まえられる。その後クロノは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に戻る気でいた。
―――――なのに、それなのに。

(―――――――嫌だ)

あれだけ犯人を捜し続けてきたのに、知るのが怖い。
それはクロノが知らないナギの最後を知るという事であり、この手で身内を捕らえなければいけないという事。
きっとそれを知れば、堅物ではあるけれど優しい面もあるラハールが代わりを務めてくれるだろう。お前は休んでいろ、と言ってくれるだろう。けれど、それはクロノの望みじゃない。

(オレは強行検束部隊の隊長だろ、何怖がってんだ。こうなるのだって予想はしてた。いつかあの女を捕まえて、腐ったカトレーンを終わりにしてやるんだって……思ってたじゃねえか)

シャロンを捕まえれば、ナギを殺した犯人を捕まえられる。ずっと苦しんできたティアに、やっと兄らしいことをしてやれる。クロノ達を見る周りの目はきっと変わるだろうけど、それはそれで構わない。間違っている事を間違っていると言うのが、評議院に務める者の仕事なのだから。

「アイツを……ナギを殺したのは、お祖母様なのか」

無理矢理感情を抑え込んだ声で、そう尋ねる。
もう答えはとっくに出ているけれど、その答えが合っているのかどうかを聞く。
ジョーカーはふっと笑みを零すと、軽い調子で口を開いた。



「ああ、そうだよ。僕が…僕達がこの目で見たんだから、間違いない」



愕然とした。
崩れ落ちそうになるのを何とか堪える。
ミョルニルを支えにクロノは立つと、呟く。

「見てたのか」
「命じられたからね」
「ナギが死ぬのを、見てたんだな」
「最初から最後まで、全てを見ていたよ」

ギリ、と歯を食いしばる。
ジョーカーの口から放たれた答えが、憎たらしい。

「見てたのに、何で止めなかった」
「見ていろと命じられたからさ、手を出すなともね」

顔を上げる。
高い塔の向こうに、カトレーンの本宅である屋敷が見えた。自分が昔あの場所で暮らしていたのかと思うと苛立ちが湧きあがる。
あの場所で、ナギは殺されたのだ。届かないと解っていながら、クロノに助けを求め続けていたのだ。

(……ナギ)

皆が呼ぶのとは別の愛称でクロノを呼んだあの軽やかな声は、最後の最後までクロノを
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