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Element Magic Trinity
神と罪
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はない。
つまりクロノは魔力を奪われ続ける事になる―――――ハズだった。

「冥界の女王ヘルに命じる。“オレにかかった罪を解け。冥府の女王になら容易いだろ?”」

が、クロノは解く。
悪神ロキと女巨人アングルボザを父母として生まれた、生まれつき体の半分が黒く半分が白い恐ろしい怪物、冥界の女王であるヘルを呼ぶ事で、罪を浄化する。
本来浄化とはかけ離れた所にいるヘルだが、罪や死に溢れた冥界にいるのなら解除だって可能なはずだ――――とクロノは考えたのだ。
まあ、彼の魔法で命じる事が出来るという事は可能だという事に等しい為、考える必要はなかったのだが。

「解けたけど?」

キョトンとしたような表情で首を傾げたクロノは、1度緩んだ力を込め直す。
力強くミョルニルを握りしめて構えると、ジョーカーがクスッと笑い声を零した。

「……?何かおかしいか?」
「いや、何もおかしくはない。ただ…あの時、ナギ嬢が君に助けを求めていたのも頷けるな、と思っただけさ」
「!」

ミョルニルを落としそうになった。
ぐるぐると思考が渦巻く頭の中を強制的に整理して、考える。今、目の前のオッドアイの男は何と言った?

(ナギがオレに助けを求めた?……待て、何でコイツがナギを知ってる?)

ナギは至って普通の魔導士だった。
使う魔法も特別なモノではなかったし、特別強い訳でも特別弱い訳でもない。異名を持っていたなんて話はクロノも知らない。
美男美女しか入れないと言われる青い天馬(ブルーペガサス)にいる、という事で週刊ソーサラーには何度か登場しているが、その程度であるはずだ。

「何でお前がナギを知ってるんだ……知り合いだったのか?」
「いいや、1度会った事があるだけだよ。6年前の、あの日にね」

6年前。
これが違う年だったら、クロノは「ふーん、そうなんだ」程度で終わらせていただろう。
が、6年前となれば話は別だ。
ナギにとって、クロノにとって、6年前は全てが変わってしまった時だから。

「何も知らず屋敷に招かれたナギ嬢が自分の末路を知った時の驚いた顔は、今でも忘れられないよ」

笑みを浮かべて、ジョーカーが呟く。
あれほど片づけるのに苦労した思考が、ゆっくりと抜け落ちていく。
つー…と頬を汗が伝い、ぽたりと制服の肩を濡らす。

「シャロン様は言った……こんな低俗の女はクロノヴァイスに相応しくない、と。だから、始末したんだろうね」

始末。
その言葉が何を意味するか、理解したくなかった。
どこかで、あの女ならやりかねないな、と冷静に考える自分がいたが、それを呑み込むかのように混乱が襲う。
認めたくなかった。聞きたくなかった。もう、この話を終わりにしてしまいたかった。
そう、思っているはずなのに。


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