神と罪
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一匹狼の妹は、クロノにとって大事な存在だった。勿論、弟も。
それでも自分が―――――自分とクロスがティアを誰より大事にしてしまうのは、彼女の生まれ持った魅力、だろうか。
人を寄せ付けまいと振る舞っているのに、孤独を望んでいるのに、何故か放っておけない。それはきっと彼女の根本が優しいからで、無意識に手を差し伸べてしまう――――あるいは、行動の結果が人に手を差し伸べた事になってしまうから。
優しくしようとして優しくしている訳ではなく、それはいわば彼女の本能。
(不器用な妹なこった。素直に優しく出来りゃ、もっと生きやすいだろうに……ま、それじゃティアであってティアじゃねーがな)
ああやって、無意識で優しく出来るのがティアであり。
彼女が孤独を望んでいる事を知りながら放っておけないのがギルド最強の女問題児であり。
誰かを傷つける為に魔法を振るった結果が誰かを救った事になるのが、クロノの自慢の妹なのだ。
(さて、可愛い妹の為だ。久々に暴れるとしようか)
きっと、彼女は礼の1つも言わない。いる事に気づくのも、きっと遅い――――否、気づいてはいるが声を掛けるのは後回しにするだろう。
「あ、兄さんいたの」程度しか、クロノには言わないだろうけど。
「ありがとう」なんて世界が滅んだって言わないし、微笑みの1つもないだろうけど。
それが不器用な妹なりの精一杯の感謝だという事を、兄である自分は知っている。昔から、それが彼女の感謝であると見てきた―――――――だから、戦うのだ。
「当たり前だろ。妹の危機に駆けつけねーで、何が兄だよ」と、笑みを浮かべて答える為に。
「巨魔スルトに命じる!“好きなだけ剣を振るえ、世界を焼き滅ぼした火花の雨を!”」
投げつけるように魔力を飛ばす。すると、その魔力がゆっくりと人間の様な形になっていった。サイズは明らかに人間のものではなく、所謂巨人というであろう大きさだが、それ以外は至って普通の人間であった。
バチバチと火花を散らす炎の剣を握りしめるその姿を、ジョーカーは見上げた。
「……憤怒」
静かに呟く。
ジョーカーの右手から放たれた魔力の球体は、宙を漂いながらスルトへと向かう。それを燃える炎の目で見たスルトは、炎の剣を天に掲げた。
剣が赤く輝くのを見たクロノは溜息をつき、更に魔力を飛ばす。
「神々の住居アスガルズに命じる。“堅固な城壁でオレ達を囲め、火の雨を受けないように!”」
右人差し指と中指を揃え、ピッと天を指す。立った指の先に魔法陣が展開し、一瞬にして黄金造りの壮麗な宮殿が辺りを囲んだ。気づけばジョーカーとスルトを除く全員が中におり、ウェンディ達は訳が解らず瞬きを繰り返す。
それに気付いたのか、クロノが顔だけをこちらに向けた。
「スルトが火の雨
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