暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第99話 オマエの物は俺の物?
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るだけ。そう見えて居るでしょうから。

 ゆっくりと過ぎて行く時間。何故か高まって行く緊張。ずっと喧しいだけで有ったハルヒすら、何故か長門さんの次の行動を、固唾を呑んで見つめるだけであった。

 しかし、僅かな逡巡の後、彼女は一度俺に渡し、その後ふたつに分けられた菓子パンの片割れを手に取る。その際に微かに発せられたのは喜。
 意味の取り様は幾らでもあるけど、何故か哀ばかりが気に成る彼女から発せられる雰囲気の中では喜の感情は良い。

 その瞬間、周囲から発せられた雑多な気。良く分からないけど、陰と陽。両方の気が発せられたのは間違いない。
 そうして、

「いい事。もしも試験で赤点なんか取ったら死刑だからね」

 何故だか判らないが、かなり不機嫌な気を孕んだハルヒの言葉が文芸部の部室内に響いた。ただ、彼女の言葉により、何故か息をする事さえ憚られるように緊張していた部室内の空気が、最初のゆったりとした昼食時に相応しい空気に戻った事は間違いない。
 再び振り返りハルヒの方に向く俺。その俺を見つめる……しかし、声の調子ほど不機嫌には感じない表情で、

「もっとも、あんたの場合はこの学校への編入試験に合格したんだから、問題はないか」

 こう続けたのだった。

 ……これは普通に考えたら当たり前の事。
 但し、俺に関してこれは当て嵌まらない。

 俺が召喚される事――正確に言うと俺の異世界同位体を召喚する事は前々から決まっていたようで、その際に、今回の任務に関しては、状況次第では十一月末から一月頭まで掛かる可能性の有る長丁場の可能性が有ったので、その間この高校に通う事も決まっていました。
 二度に及ぶ過去の改変と、それの揺り戻し。更に、多少のつじつま合わせが行われるらしいのですが……。その詳しい内容に付いては俺には教えられていません。
 ただ、故に編入試験を俺がわざわざ受けた訳ではない、と言う事。そりゃ、俺の異世界同位体にも当然、その世界での生活と言う物が有るので、これは当然の処置なのですが、それ故に俺がやって来た時には、既に替え玉が俺の代わりに試験を受けて置いてくれていた、と言う事なので、俺にはこの高校の正確なレベルと言う物は判らないまま。
 まして、本来転校が実行される予定だったのは二週間前。しかし、その二週間は身体の回復やその他に費やして仕舞った為に……。

 ……やれやれ。少し深いため息を吐く俺。その瞬間、昼休みの終了五分前を告げるチャイムが古い校内放送用のスピーカーから鳴り響いたのでした。


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