第6章 流されて異界
第99話 オマエの物は俺の物?
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ヒの手の中に有るアンパンを恨めし気に見る俺。
正に気分的に言うのなら、エリ、エリ、レマ、サバクタニ。こう言う気分。
しかし、
そんな俺の肩の辺りを躊躇いがちに少し叩く誰か。
何時までも恨めし気に見て居ても仕方がない。まして、俺なら飛霊に授業を受けさせて、本体の方は飯を食いに外に出る方法だってある。そんな、ひとつやふたつの菓子パンに拘らなければならない理由はないか。そうあっさり断じて、その肩を引っ張った少女の方に向き直る俺。
その向き直った俺の前に差し出されるチョコパンひとつ。当然、チョコパンが目の前に歩いて来た訳ではないので、パンの袋を持つ手。そして其処から上げた視線が、俺の顔を見つめる彼女の視線と交わる。
……これは、
「俺が食べても良いと言う事なのかな、長門さん」
ハルケギニア世界の彼女と同じ表情。しかし、何故か彼女からは少し哀しげな気が流れて来る事が有るのですが……。
ただ、それもほんの一瞬。俺の問い掛けに、静かに首肯く彼女。
もっともだからと言って、ごっつあんです、と受け取って食べる訳にも行きませんか。一度、彼女が手に取ったと言う事は、彼女が食べようと思って手に取ったはず。
まさか、俺の食べる分を確保して置いてくれた、などとは考えられません。
そう考える俺。ただ、この長門有希と言う少女に関しては良く分からない部分が多くて、もしかするとその可能性。俺の為に菓子パンを確保して置いてくれた可能性もゼロではないのですが……。
こちらの世界に流されて来てから、彼女が俺に示してくれたのは表面上で他者が彼女から感じる雰囲気とは一線を画す物。
失った右腕、両足の再生。俺が眠り続けた三日間の看病もほとんど彼女一人で為した事。更に、今も俺は彼女のマンションの一室に間借りしている状態。
彼女が言うには、これでも俺の異世界同位体が彼女に対して為してくれた事に比べると足りないぐらい、だと言う事になるようなのですが。
それに、俺が彼女の部屋に間借りして居るのは、俺の異世界同位体との約束。この世界に来た……召喚された時は彼女の部屋。長門さんが言うにはふたりの部屋に住む事が約束と成っていたらしいので。
俺は差し出された菓子パンを袋から取り出し、
「それなら、半分こにしようかな」
ふたつに割った片方を長門さんに差し出す。
かなりの戸惑いの視線。いや、視線、そして表情も今までと変わらない。しかし、明らかに戸惑っているのが判る雰囲気。
まぁ、彼女に関してはふたりの間に霊道が開いて居て、彼女のほんの些細な感情の揺れすら伝わって来ていますから、この細かな雰囲気の差が判るのでしょうが……。
普通の人間になら、感情の籠らないメガネ越しの冷たい瞳にただ俺を映してい
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