第6章 流されて異界
第99話 オマエの物は俺の物?
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「みんな、もう集まっていたのね」
扉が開くと同時に室内に投げ込まれる無神経な……配慮や遠慮と言うものが地平線の彼方に放り出されたかのような声音が響く。
もっとも、もういい加減面倒臭いので態々立ち上がって振り返る必要性も感じないし、これ以上、のんびりとして居たら昼飯を食う時間も無くなります。
「あ、涼宮さん」
俺が背後から投げつけられた声に対して、完全な無視を決め込む中に響く朝比奈さんの声。冬の日に相応しい冷たすぎる大気や、どんよりと曇った氷空を払拭するような明るい声によって、最後に登場した人物の正体が判明する。
もっとも、午前中だけであれだけ聞かされた声をあっさりと忘れる訳はないのですが。
それに、今はそんな些末な事――この場にこのメンバーを集めた張本人が現われた事などにイチイチ対応している余裕は既になく成っていますから。
そう考えながら、自らは買って来ただけで未だ袋を開ける事さえしていない菓子パンのひとつに手を伸ばす俺。
何故ならば、ほんの少し後ろを向いて居る間……いや、朝比奈さんをほんの少し余計に見つめて居た間に、山のように積み上げて有ったはずの菓子パンが半分以下の量に減って居て、このままでは俺の食べる分の確保すら難しい状況と成って居ましたから。
まぁ、確かに大量に買い込んだとは言っても四人で食べているのですから、一度減り始めると無くなるのは早いですか。
想定以上の速度で減って居た菓子パンの残量を気にしながら、それでも何とか最低限の量は確保出来そうなので慌てず、騒がず食事を再開する俺。
それに、そもそも俺は食べるのが早い方ではないので。
そうして、
既に買って来た数の半分以下に減った段階で最初の一個を手に取る俺。ほぼ無作為に選んだその菓子パンはごく普通のクリームパンと言う何とも無難な代物。
しかし――
その菓子パンの袋を後ろから出て来た白い繊手が奪い去って仕舞う。
そして、
「みくるちゃん。アタシにも何か温かい飲み物をお願いね」
空いたままに成っていた俺の左側のパイプ椅子に腰を下ろしながら、そう言うハルヒ。
……と言うか、
「こら、ハルヒ。それは俺の昼飯やぞ」
そう、あまり凄みのない口調で一応、文句を口にして置く俺。
但し、取り上げられたクリームパンに拘泥する事もなく、既に次の菓子パンに手を伸ばしながら、の言葉なので、まったく必死さも感じなければ、怒っているようにも聞こえなかったとは思いますが。
ただ、ひとつ頂戴ね、の一言ぐらいは欲しかったかな、と思う程度なのですけど。
「何言っているのよ。あんたの物はあたしの物。そう言う関係だったじゃないの」
それにクリームパンのひとつぐらいケチケチして居るようじゃ、
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